物理 / 波動
ホイヘンスの原理
要点整理
ホイヘンスの原理とは
波がどのように伝わっていくかを説明する考え方に、ホイヘンスの原理があります。これは、オランダの物理学者ホイヘンスが提唱したもので、次のように述べられます。
ある時刻の波面上のすべての点は、それぞれが新しい波(素元波)の発生源となる。素元波は、もとの波と同じ速さで、球面状(平面で考えるときは円形)に広がっていく。少し時間が経った後の実際の波面は、これらすべての素元波に共通に接する面(包絡面)として得られる。
言葉で説明すると難しく感じますが、やっていることは単純です。「波面上の無数の点それぞれから、小さな波紋が広がっていく。それら小さな波紋のふちを全部つなげると、次の瞬間の波面になる」という考え方です。
この原理を使うと、波が直進すること、反射すること、屈折すること、障害物の裏に回り込むこと(回折)まで、すべて同じ1つの考え方で説明できます。
ホイヘンスの原理で直進を説明する
まっすぐな波面(平面波)が、何もない一様な媒質の中を進む場合を考えます。波面上の各点から同じ速さ・同じタイミングで素元波が広がるので、それらの円(球面)に共通に接する包絡面は、もとの波面と平行な、まっすぐな面になります。これが、波が(障害物がなければ)まっすぐ進むことの説明です。
ホイヘンスの原理で反射・屈折を説明する
波が、異なる媒質の境界面(たとえば空気とガラスの境目)に達すると、境界面に達した点から先に素元波が広がり始めます。境界面のどの点も同時に波が届くわけではないため、素元波が広がり始めるタイミングが場所によってずれます。このタイミングのずれと、それぞれの媒質での伝わる速さの違いを考え合わせることで、
- 反射の法則($\theta_i=\theta_r$)
- 屈折の法則(スネルの法則、$n_1\sin\theta_1=n_2\sin\theta_2$)
を、幾何学的に導くことができます。この導出の詳しい手順は、公式集の証明ページ「屈折の法則(スネルの法則)の導出」で扱っています。ここでは、境界面で速さが変わる媒質2の中で素元波が広がっていくようすを、シミュレーションで確認してみましょう。
下のシミュレーションでは、上側の媒質1(速さ $v_1$)から平面波が境界面に届き、境界面に届いた点から順に、下側の媒質2(速さ $v_2$)の中へ素元波が広がっていきます。これらの素元波に共通に接する線が、屈折した波の新しい波面です。入射角と、2つの媒質の速さの比 $v_2/v_1$ を変えて、波面の曲がり方がどう変わるか確認してください。
例題
例題1(基本)
問題
ホイヘンスの原理における「素元波」とは何か、簡潔に説明せよ。
解答・解説を見る
ある時刻の波面上の各点を発生源として、その点から新たに球面状(平面では円形)に広がっていくと考える、小さな波のこと。
答え:波面上の各点から広がる、もとの波と同じ速さの小さな球面波(円形波)のこと。
例題2(標準)
問題
ホイヘンスの原理を使うと、波が直進すること(何もない一様な媒質中でまっすぐ進むこと)をどのように説明できるか、簡潔に述べよ。
解答・解説を見る
平面波の波面上の各点から、同じ速さ・同じタイミングで素元波が広がっていく。すべての素元波は同じ大きさの円(球面)になるので、それらに共通に接する包絡面(次の瞬間の波面)は、もとの波面と平行な、まっすぐな面になる。これが波面ごとに繰り返されるため、波はまっすぐ進む。
答え:一様な媒質では、波面上の全点から広がる素元波の大きさが等しいため、その包絡面(新しい波面)がもとの波面と平行な平面になり、これが繰り返されることで波はまっすぐ進む。
例題3(応用)
問題
速さ $v_1$ の媒質1から、速さ $v_2$($v_2 < v_1$)の媒質2へ、平面波が入射角 $\theta_1$ で入射した。ホイヘンスの原理にもとづくと、屈折角 $\theta_2$ は $\theta_1$ より大きいか小さいか、理由とともに答えよ。
解答・解説を見る
境界面に先に達した点から広がる素元波は、遅い媒質2の中では半径が小さくなる($r=v_2\Delta t$ で $v_2$ が小さいため)。素元波の広がりが遅くなる分、それらに接する新しい波面は、境界面の法線に近づく向きに傾く。これは屈折角 $\theta_2$ が入射角 $\theta_1$ より小さくなることを意味する(実際、$n_1\sin\theta_1=n_2\sin\theta_2$ で $v_2
答え:$\theta_2$ は $\theta_1$ より小さくなる。速い媒質から遅い媒質に入ると、波は境界面の法線に近づく向きに曲がるため。
練習問題
問題
ホイヘンスの原理によれば、次の瞬間の波面は何によって決まるか。「素元波」「包絡面」という2つの語句を用いて答えよ。
答え
現在の波面上の各点から広がる無数の素元波に、共通に接する包絡面が、次の瞬間の実際の波面になる。