物理基礎 / 運動とエネルギー

変位と速度

要点整理

物体の運動を調べるとき、まず「物体がどこにいるか」を数直線上の1つの数値(座標)で表すことから始めます。この座標を位置と呼びます。位置が時間とともにどう変わるかを追いかけることが、運動を調べるということです。

変位と道のりの違い

物体の位置が変わったとき、その変化のしかたには2つの表し方があります。

  • 道のり:物体が実際に動いた経路の長さの合計です。向きを考えず、必ず0以上の値になります。
  • 変位:最初の位置から最後の位置まで、まっすぐ結んだときの「向きを持つ移動量」です。記号は $\Delta x$(「デルタ・エックス」と読みます。$\Delta$ は「変化量」を表す記号です)を使い、$\Delta x = ($ 最後の位置 $) - ($ 最初の位置 $)$ で計算します。

具体例で確認しましょう。数直線上で、東向きを正とします。ある人が東へ5m歩いた後、西へ2m戻ったとします。

  • 実際に歩いた長さの合計(道のり)は $5 + 2 = 7\ \mathrm{m}$ です。
  • 最初の位置(0m地点)から最後の位置(3m地点)までの移動量(変位)は $\Delta x = 3 - 0 = 3\ \mathrm{m}$(東向きに3m)です。

このように、途中で向きを変える運動では、道のりと変位の値は一致しません。往復運動をして元の位置に戻ってきた場合、道のりは0にはなりませんが、変位はちょうど $0$ になります。

速さと速度の違い

「どれくらいの勢いで動いているか」を表す量にも、2種類の表し方があります。

  • 平均の速さ:単位時間あたりに進んだ道のり $\ell$ のことです。$\bar{v} = \dfrac{\ell}{t}$ で計算します。向きを持たないスカラー量です。
  • 平均の速度:単位時間あたりの変位 $\Delta x$ のことです。$\bar{v} = \dfrac{\Delta x}{\Delta t}$ で計算します。大きさと向きの両方を持つベクトル量です。符号(プラス・マイナス)によって向きを表します。

物体が一直線上を一方向にだけ進む場合は、道のりと変位の大きさが等しいため、速さと速度の大きさ(絶対値)も等しくなります。しかし、向きを変えたり往復したりする運動では、この2つは異なる値になるので注意が必要です。

瞬間の速度とx-tグラフ

「平均の速度」は、ある区間(始めと終わり)をまとめて見たときの速度でした。これに対して、「ある一瞬」での速度を瞬間の速度と呼びます。瞬間の速度は、平均の速度を測る時間 $\Delta t$ を、ものすごく短くしていったときの値と考えることができます。

物体の位置 $x$ を縦軸に、時刻 $t$ を横軸にとったグラフをx-tグラフと呼びます。x-tグラフでは、

  • グラフの傾きが、その部分の速度を表します。傾きが急なほど速く動いており、傾きがマイナスなら負の向き(座標が減る向き)に動いています。
  • グラフが水平(傾き0)であれば、物体は静止しています。

2点間を結んだ直線の傾きは平均の速度を、グラフ上のある1点における接線(その点で曲線に触れる直線)の傾きは瞬間の速度を表します。

下のシミュレーションでは、一定の速度 $v_0$ で動く物体のx-tグラフを表示しています。速度の値を変えると、グラフの傾きがどう変わるか、また物体がどちらの向きに動くかを確認してみましょう。上部の赤い点は、実際の物体の位置を数直線上に表したものです。

例題

例題1(基本)

問題

直線道路を、80mを16秒で東向きに歩いた。平均の速さと平均の速度を求めよ。

解答・解説を見る

平均の速さは、道のりを時間で割って求めます。

$\bar{v} = \frac{80}{16} = 5\ \mathrm{m/s}$

この人はずっと東向きに一直線に歩いているので、道のりと変位の大きさは同じ $80\ \mathrm{m}$ です。したがって、平均の速度も同じ計算になり、向きも考えて答えます。

$\bar{v} = \frac{80}{16} = 5\ \mathrm{m/s}\ (東向き)$

答え:平均の速さ $5\ \mathrm{m/s}$、平均の速度は東向きに $5\ \mathrm{m/s}$

例題2(標準)

問題

ある人が東へ100m歩いた後、引き返して西へ40m歩いた。かかった時間は合計70秒だった。東向きを正として、(1)道のり、(2)変位、(3)平均の速さ、(4)平均の速度を求めよ。

解答・解説を見る

(1) 道のり

実際に歩いた距離をすべて足し合わせます。

$100 + 40 = 140\ \mathrm{m}$

(2) 変位

最初の位置(0m地点)から最後の位置までの移動量を求めます。東へ100m進んでから西へ40m戻ったので、最後の位置は東へ $100-40=60\ \mathrm{m}$ の地点です。

$\Delta x = 100 - 40 = 60\ \mathrm{m}\ (東向き)$

(3) 平均の速さ

道のり $140\ \mathrm{m}$ を時間 $70\ \mathrm{s}$ で割ります。

$\bar{v} = \frac{140}{70} = 2\ \mathrm{m/s}$

(4) 平均の速度

変位 $60\ \mathrm{m}$ を時間 $70\ \mathrm{s}$ で割ります。

$\bar{v} = \frac{60}{70} = \frac{6}{7} \approx 0.86\ \mathrm{m/s}\ (東向き)$

道のりを使った(3)と、変位を使った(4)とで、値がまったく違うことに注目してください。往復すると道のりの方が変位より大きくなります。

答え:道のり $140\ \mathrm{m}$、変位 東向きに $60\ \mathrm{m}$、平均の速さ $2\ \mathrm{m/s}$、平均の速度 東向きに約 $0.86\ \mathrm{m/s}$

例題3(応用)

問題

自転車で、東向きに150mを30秒で走った後、信号待ちで10秒間停止し、その後西向きに90mを20秒で走った。東向きを正として、この移動全体について、(1)全体の時間、(2)道のり、(3)変位、(4)平均の速度を求めよ。

解答・解説を見る

(1) 全体の時間

走った時間と止まっていた時間をすべて足します。

$30 + 10 + 20 = 60\ \mathrm{s}$

(2) 道のり

信号待ちの間は動いていないので道のりには加算されません。実際に動いた距離だけを足します。

$150 + 90 = 240\ \mathrm{m}$

(3) 変位

最初の位置から最後の位置までの移動量です。東へ150m進み、西へ90m戻ったので、

$\Delta x = 150 - 90 = 60\ \mathrm{m}\ (東向き)$

(4) 平均の速度

変位を「全体の時間」(信号待ちの10秒も含む)で割ります。

$\bar{v} = \frac{60}{60} = 1\ \mathrm{m/s}\ (東向き)$

ここで注意したいのは、平均の速度を求めるときの時間には、静止していた10秒間も含めるということです。信号待ちの間は変位が増えないだけで、時間は確実に過ぎているからです。

答え:全体の時間 $60\ \mathrm{s}$、道のり $240\ \mathrm{m}$、変位 東向きに $60\ \mathrm{m}$、平均の速度 東向きに $1\ \mathrm{m/s}$

練習問題

問題

車で、北向きに120mを15秒で走った後、南向きに40mを5秒で走った。北向きを正として、(1)道のり、(2)変位、(3)平均の速さ、(4)平均の速度を求めよ。

答え

(1) 道のり:$120+40=160\ \mathrm{m}$ (2) 変位:$120-40=80\ \mathrm{m}$(北向き) (3) 平均の速さ:$160 \div 20 = 8\ \mathrm{m/s}$ (4) 平均の速度:$80 \div 20 = 4\ \mathrm{m/s}$(北向き)