物理基礎 / 運動とエネルギー

熱と温度、比熱と熱量保存

要点整理

このページでは、力学から少し離れて、「熱」と「温度」について学びます。日常会話では同じような意味で使われることもありますが、物理では明確に区別される量です。

温度と熱の違い

温度は、物体がどれくらい熱いか冷たいかを表す量です。単位には、日常でおなじみのセルシウス温度($℃$)のほかに、絶対温度(単位 $\mathrm{K}$、ケルビン)が使われることもあります。絶対温度とセルシウス温度の間には、

$T[\mathrm{K}] = t[℃] + 273$

という関係があります。$0\ \mathrm{K}$(絶対零度)は、理論上考えられる最も低い温度です。なお、温度の「差」を考えるときは、目盛りの間隔がどちらの単位でも同じなので、$℃$ で計算しても $\mathrm{K}$ で計算しても、同じ値になります。

は、温度の異なる2つの物体を接触させたときに、高温の物体から低温の物体へ移動するエネルギーのことです。移動する熱の量を熱量と呼び、記号 $Q$、単位はジュール($\mathrm{J}$)で表します。熱は温度が等しくなるまで移動し続け、両者の温度が等しくなった状態を熱平衡と呼びます。

比熱と熱量の式

同じ質量の物質でも、温めやすいものと温めにくいものがあります。たとえば、鉄よりも水の方が温まりにくい(冷めにくい)ことは経験的に知られています。この「温まりやすさ」を数値で表したものが比熱です。

比熱は、その物質1gの温度を1K上昇させるのに必要な熱量として定義され、記号 $c$、単位は $\mathrm{J/(g\cdot K)}$ で表されます。水の比熱は $c=4.2\ \mathrm{J/(g\cdot K)}$ で、これはよく使う値なので覚えておきましょう。

質量 $m$[g]の物質の温度を $\Delta T$[K]だけ変化させるのに必要な熱量 $Q$ は、比熱の定義から、

$Q = mc\Delta T$

で計算できます。比熱が大きい物質ほど、同じ質量・同じ温度変化でも、より多くの熱量を必要とします。

熱量保存則

外部との熱のやり取りがない(熱が逃げない)容器の中で、温度の異なる物体を接触させたり混ぜ合わせたりすると、熱は高温の物体から低温の物体へ移動し、やがて熱平衡に達します。このとき、

$\text{高温の物体が失った熱量} = \text{低温の物体が得た熱量}$

という関係が成り立ちます。これを熱量保存則と呼びます。これは、外部にエネルギーが逃げない限り、熱の総量は変化しない(移動するだけ)という考え方にもとづいています。

熱量保存則を使う問題では、まず「どちらが熱を失う側で、どちらが熱を得る側か」を確認し、それぞれについて $Q=mc\Delta T$ を立てて、両者を等号で結ぶ、という手順で解いていきます。

例題

例題1(基本)

問題

$100\ \mathrm{g}$ の水を、$20℃$ から $80℃$ まで加熱するのに必要な熱量を求めよ。水の比熱を $4.2\ \mathrm{J/(g\cdot K)}$ とする。

解答・解説を見る

温度変化は $\Delta T = 80-20=60\ \mathrm{K}$ です。$Q=mc\Delta T$ に $m=100$、$c=4.2$、$\Delta T=60$ を代入します。

$Q = 100\times 4.2\times 60$

右辺を順番に計算します。

$Q = 420\times 60 = 25200\ \mathrm{J}$

答え:$25200\ \mathrm{J}$($25.2\ \mathrm{kJ}$)

例題2(標準)

問題

$100℃$ に熱した質量 $50\ \mathrm{g}$ の金属球を、$20℃$、質量 $200\ \mathrm{g}$ の水の中に入れたところ、しばらくして全体の温度は $24℃$ になった。この金属の比熱を求めよ。水の比熱を $4.2\ \mathrm{J/(g\cdot K)}$ とし、熱は外部に逃げないものとする。

解答・解説を見る

金属は $100℃$ から $24℃$ に下がったので熱を失い、水は $20℃$ から $24℃$ に上がったので熱を得ています。

水が得た熱量

$Q_{水} = 200\times 4.2\times(24-20) = 200\times 4.2\times 4 = 3360\ \mathrm{J}$

金属が失った熱量

金属の比熱を $c$ とすると、

$Q_{金属} = 50\times c\times(100-24) = 50\times c\times 76 = 3800c$

熱量保存則を立てる

金属が失った熱量と、水が得た熱量は等しいので、

$3800c = 3360$

両辺を $3800$ で割ると、

$c = \frac{3360}{3800} \approx 0.88\ \mathrm{J/(g\cdot K)}$

答え:金属の比熱は約 $0.88\ \mathrm{J/(g\cdot K)}$

例題3(応用)

問題

$80℃$ の水 $300\ \mathrm{g}$ と、$20℃$ の水 $200\ \mathrm{g}$ を混ぜ合わせた。混ぜた後の水の温度を求めよ。熱は外部に逃げないものとする。

解答・解説を見る

混ぜた後の温度を $T$[℃]とします。同じ水どうしなので比熱は共通の値 $c$ で、熱量保存則の式を立てると両辺の $c$ は約分されて消えます。

高温側($80℃\to T$)が失った熱量と、低温側($20℃\to T$)が得た熱量が等しいので、

$300c(80-T) = 200c(T-20)$

両辺を $c$ で割ります。

$300(80-T) = 200(T-20)$

左辺・右辺をそれぞれ展開します。

$24000 - 300T = 200T - 4000$

$T$ の項を右辺に、数字の項を左辺に集めます。

$24000+4000 = 200T+300T$

$28000 = 500T$

両辺を $500$ で割ると、

$T = 56℃$

答え:混ぜた後の温度は $56℃$

質量が大きい($300\ \mathrm{g}$)方の温度である $80℃$ に近い値になっていることに注目すると、結果の見当をつける助けになります。

練習問題

問題

$150\ \mathrm{g}$ の水を、$15℃$ から $45℃$ まで加熱するのに必要な熱量を求めよ。水の比熱を $4.2\ \mathrm{J/(g\cdot K)}$ とする。

答え

$Q=150\times 4.2\times(45-15)=150\times 4.2\times 30=18900\ \mathrm{J}$($18.9\ \mathrm{kJ}$)