物理 / 電気と磁気

磁場の基本

要点整理

磁場の向きと強さ

物理基礎で学んだように、磁石のまわりには磁場ができており、N極から出てS極に入る向きの磁力線で表されます。また、電流が流れる導線のまわりにも磁場ができます。この単元では、その強さを具体的な式で計算できるようにしていきます。

磁場の強さを表す量として、この単元では主に磁束密度 $B$(単位: テスラ、記号T)を使います。磁場の向きは、その場所に置いた方位磁針のN極が指す向きです。

電流のまわりにできる磁場の向きは、「右手の法則」で決めることができました。

  • 直線電流の場合: 右手の親指を電流の向きに合わせると、残りの指を握ったときの向きが磁場の向きになります(磁場は電流を中心とした同心円状にできます)。
  • 円形電流の場合: 右手の指先を電流の向きに合わせて丸めると、親指が指す向きが、円の中心での磁場の向きになります。
  • ソレノイド(コイル)の場合: 右手の指先を電流の向きに合わせて丸めると、親指が指す向きが、コイルの内部での磁場の向きになります。

磁場の向きを決めるこの右手を使う法則は、後で学ぶ「電流が磁場から受ける力の向き」を決めるフレミングの左手の法則とは別のものです。左右を間違えないように注意しましょう。

直線電流がつくる磁場の強さ

十分に長い直線状の導線に電流 $I$ を流すと、導線から距離 $r$ の点にできる磁場の強さ $B$ は、次の式で表されます。

$B = \mu_0 \dfrac{I}{2\pi r}$

ここで $\mu_0$ は真空の透磁率と呼ばれる定数で、$\mu_0 = 4\pi \times 10^{-7}\,\text{T・m/A}$ という値をとります。この式が意味していることを確認しましょう。

  • 電流 $I$ が大きいほど、磁場は強くなります(比例)。
  • 導線からの距離 $r$ が大きいほど、磁場は弱くなります(反比例)。

計算のときは、$\mu_0 = 4\pi\times10^{-7}$ の中の $\pi$ が、式の分母にある $2\pi$ の $\pi$ と約分できることが多く、

$B = \dfrac{\mu_0}{2\pi}\cdot\dfrac{I}{r} = 2\times10^{-7}\times\dfrac{I}{r}$

という形に整理できることを覚えておくと計算が速くなります。

円形電流がつくる磁場の強さ(中心)

半径 $r$ の円形コイルを $N$ 回巻いたものに電流 $I$ を流すと、その中心にできる磁場の強さは、次の式で表されます(1巻きの場合は $N=1$ です)。

$B = \mu_0 \dfrac{NI}{2r}$

巻き数 $N$ が多いほど、それぞれの巻きがつくる磁場が同じ向きに重なり合うため、磁場は $N$ 倍強くなります。

ソレノイドの内部にできる磁場の強さ

導線を筒状に密に巻いたコイルをソレノイドと呼びます。単位長さあたりの巻き数を $n$(単位: 回/m)とすると、ソレノイドの内部にできる磁場の強さは、次の式で表されます。

$B = \mu_0 n I$

この式の特徴は、コイルの半径にはよらず、単位長さあたりの巻き数 $n$ と電流 $I$ だけで決まるという点です。$n$ は「全体の巻き数 $N$」を「コイルの長さ $L$」で割ったもの、つまり $n=N/L$ であることに注意してください。ソレノイドの内部では、磁場はほぼ一様(どこでも同じ向き・同じ強さ)になります。

電流 $I$ を大きくすると磁場が強くなり、距離 $r$ を大きくすると磁場が弱くなることを確かめましょう。

例題

例題1(基本)

問題 十分に長い直線導線に $I=5.0\,\text{A}$ の電流を流した。導線から $r=0.10\,\text{m}$ 離れた点の磁場の強さを求めよ。ただし真空の透磁率を $\mu_0=4\pi\times10^{-7}\,\text{T・m/A}$ とする。

解答・解説を見る

直線電流のつくる磁場の式 $B=\mu_0\dfrac{I}{2\pi r}$ に数値を代入します。

$B = 4\pi\times10^{-7}\times\dfrac{5.0}{2\pi\times0.10}$

分子と分母にある $\pi$ に注目して整理します。

$B = \dfrac{4\pi\times10^{-7}}{2\pi}\times\dfrac{5.0}{0.10} = 2\times10^{-7}\times\dfrac{5.0}{0.10}$

$\dfrac{5.0}{0.10}=50$ なので、

$B = 2\times10^{-7}\times50 = 100\times10^{-7} = 1.0\times10^{-5}\,\text{T}$

答え: $B = 1.0\times10^{-5}\,\text{T}$

例題2(標準)

問題 半径 $r=0.050\,\text{m}$ の円形コイルを $N=20$ 回巻いたものに、$I=2.0\,\text{A}$ の電流を流した。コイルの中心にできる磁場の強さを求めよ。

解答・解説を見る

円形電流のつくる磁場の式 $B=\mu_0\dfrac{NI}{2r}$ に数値を代入します。

$B = 4\pi\times10^{-7}\times\dfrac{20\times2.0}{2\times0.050}$

まず分子の $NI$ を計算します。

$N\times I = 20\times2.0=40$

次に分母を計算します。

$2\times r = 2\times0.050=0.10$

したがって、

$B = 4\pi\times10^{-7}\times\dfrac{40}{0.10} = 4\pi\times10^{-7}\times400$

$4\times400=1600$ なので、

$B = 1600\pi\times10^{-7}$

$\pi\approx3.14$ として計算すると、

$B \approx 1600\times3.14\times10^{-7} = 5024\times10^{-7} \approx 5.0\times10^{-4}\,\text{T}$

答え: $B \approx 5.0\times10^{-4}\,\text{T}$

例題3(応用)

問題 長さ $L=0.25\,\text{m}$、巻き数 $N=500$ のソレノイドに、$I=3.0\,\text{A}$ の電流を流した。ソレノイド内部の磁場の強さを求めよ。また、電流の向きを逆にすると、内部の磁場の向きはどうなるか答えよ。

解答・解説を見る

単位長さあたりの巻き数を求める

$n = \dfrac{N}{L} = \dfrac{500}{0.25} = 2000\,\text{回/m}$

磁場の強さを求める

ソレノイドの磁場の式 $B=\mu_0nI$ に数値を代入します。

$B = 4\pi\times10^{-7}\times2000\times3.0$

まず $2000\times3.0=6000$ を計算します。

$B = 4\pi\times10^{-7}\times6000 = 24000\pi\times10^{-7}$

$\pi\approx3.14$ として、

$B \approx 24000\times3.14\times10^{-7} = 75360\times10^{-7} \approx 7.5\times10^{-3}\,\text{T}$

電流の向きを逆にした場合

右手の法則より、コイルの内部の磁場の向きは電流の向きによって決まります。電流の向きを逆にすると、右手の指を巻く向きも逆になるため、磁場の向きも逆になります(強さは変わりません)。

答え: $B \approx 7.5\times10^{-3}\,\text{T}$、磁場の向きは逆になる

練習問題

問題 十分に長い直線導線に電流 $I=8.0\,\text{A}$ を流したとき、磁場の強さが $B=4.0\times10^{-5}\,\text{T}$ になるのは、導線から何mの点か。

答え

$B=\mu_0\dfrac{I}{2\pi r}=2\times10^{-7}\times\dfrac{I}{r}$ より、

$r = \dfrac{2\times10^{-7}\times I}{B} = \dfrac{2\times10^{-7}\times8.0}{4.0\times10^{-5}} = \dfrac{1.6\times10^{-6}}{4.0\times10^{-5}} = 0.040\,\text{m}$