物理基礎 / 波
音の速さと音の性質
要点整理
音は縦波(疎密波)である
「横波と縦波」のトピックで学んだように、音は空気の粒子が音の進む向きと同じ方向に押されたり戻されたりすることで伝わる**縦波(疎密波)**です。太鼓を叩くと、太鼓の皮が振動し、その振動が空気を押し縮めたり、引き伸ばしたりします。この空気の密度の変化(密な部分と疎な部分)が、次々と隣の空気に伝わっていくことで、音が耳元まで届きます。
音が伝わるためには、振動を伝える媒質(空気などの物質)が必要です。宇宙空間のように空気がまったくない真空中では、音を伝える媒質がないため、音は伝わりません。
音の速さと気温の関係
音が空気中を伝わる速さ(音速)を $V$、気温を $t$[℃]とすると、次の関係式が成り立つことが実験的に知られています。
$V = 331.5 + 0.6t \quad [\text{m/s}]$
この式からいくつか大事なことが読み取れます。
まず、$t=0$[℃]のとき、$V = 331.5 + 0.6\times0 = 331.5\,\text{m/s}$ となります。つまり、$0$℃の空気中での音速はおよそ $331.5\,\text{m/s}$ です。
また、気温が $1$℃上がるごとに、音速は $0.6\,\text{m/s}$ ずつ速くなっていくことも分かります。これは、気温が高いほど空気の分子が激しく運動しており、振動(音)が隣の分子へ伝わるのが速くなるためです。
注意点:この式の $t$ は、必ず「セ氏温度[℃]」を使います。絶対温度[K]で気温が与えられた場合は、$t[\text{℃}] = (\text{絶対温度}[\text{K}]) - 273$ の関係を使って、まずセ氏温度に変換してから代入しましょう。
音の速さが分かれば、これまでのトピックで学んだ「距離 $=$ 速さ $\times$ 時間」の関係を組み合わせることで、音が届くまでの時間や、音源までの距離を計算することができます。
音の三要素
私たちが耳にする音には、「高い音・低い音」「大きい音・小さい音」、そして同じ高さ・大きさでも「ピアノの音・バイオリンの音」のように違って聞こえる違いがあります。これらの音の特徴は、波としての性質と対応づけて、次の3つの要素(音の三要素)として整理されます。
高さ:音の高さは、音の振動数によって決まります。振動数が大きいほど高い音に、振動数が小さいほど低い音に聞こえます。たとえば、ピアノの高い鍵盤の音は振動数が大きく、低い鍵盤の音は振動数が小さくなっています。
強さ:音の強さ(大きさ)は、音の振幅によって決まります。振幅が大きいほど大きな音に、振幅が小さいほど小さな音に聞こえます。太鼓を強く叩くほど、皮の振動の振幅が大きくなり、大きな音が出ます。
音色:同じ高さ、同じ大きさの音であっても、ピアノとバイオリンでは違う音に聞こえます。この違いを生み出しているのが音色です。音色は、音の波の波形の違いによって生まれます。実際の楽器の音は、単純なきれいな正弦波(サインカーブ)ではなく、基本の振動にいくつもの細かい振動が混ざり合った複雑な波形をしており、この波形の違いが「その楽器らしい音」の違いとして聞こえるのです。
例題
例題1(基本)
問題 気温が $15$℃のときの音速を求めなさい。
解答・解説を見る
$V = 331.5 + 0.6t$ の式に $t=15$ を代入します。
$V = 331.5 + 0.6 \times 15 = 331.5 + 9 = 340.5\,\text{m/s}$
したがって、音速は $340.5\,\text{m/s}$ です。
例題2(標準)
問題 花火が光ってから、その音が聞こえるまでに $3.0\,\text{s}$ かかりました。気温が $20$℃のとき、花火が上がった場所までのおよその距離を求めなさい。ただし、光が届くのにかかる時間は無視できるものとします。
解答・解説を見る
音速を求める
$V = 331.5 + 0.6t$ の式に $t=20$ を代入します。
$V = 331.5 + 0.6 \times 20 = 331.5 + 12 = 343.5\,\text{m/s}$
距離を求める
光は一瞬で届く(無視できる)と考えてよいので、光ってから音が聞こえるまでの $3.0\,\text{s}$ が、そのまま音が伝わってきた時間になります。「距離 $=$ 速さ $\times$ 時間」の関係を使うと、
$\text{距離} = 343.5 \times 3.0 = 1030.5\,\text{m}$
したがって、花火が上がった場所までの距離はおよそ $1030\,\text{m}$(約 $1.03\,\text{km}$)です。
例題3(応用)
問題 ある日、山に向かって「ヤッホー」と声を出したところ、$340\,\text{m}$離れた崖に反射した声(やまびこ)が $2.0\,\text{s}$後に聞こえました。このときの気温は何℃だったか求めなさい。
解答・解説を見る
音速を求める
やまびこが聞こえるまでに音が進んだ距離は、崖までの距離の「往復」であることに注意しましょう。声は崖まで $340\,\text{m}$ 進み、そこで反射してまた $340\,\text{m}$ 戻ってくるので、進んだ距離の合計は、
$340 \times 2 = 680\,\text{m}$
この距離を $2.0\,\text{s}$ で進んだので、音速は「距離 ÷ 時間」から、
$V = \frac{680}{2.0} = 340\,\text{m/s}$
気温を求める
$V = 331.5+0.6t$ の式に、今求めた $V=340$ を代入します。
$340 = 331.5 + 0.6t$
両辺から $331.5$ を引きます。
$340 - 331.5 = 0.6t$
$8.5 = 0.6t$
両辺を $0.6$ で割ります。
$t = \frac{8.5}{0.6} \approx 14.2\,\text{℃}$
したがって、このときの気温はおよそ $14.2$℃です。
練習問題
問題 気温が $25$℃のときの音速を求めなさい。
答え
$V = 331.5 + 0.6 \times 25 = 331.5+15 = 346.5\,\text{m/s}$