物理 / 様々な運動

万有引力とケプラーの法則

要点整理

リンゴが木から落ちるのも、月が地球のまわりを回り続けるのも、実は同じ1つの力が原因である、と考えたのがニュートンです。ここでは、質量をもつすべての物体の間にはたらく万有引力と、惑星の運動に関するケプラーの法則を学びます。

万有引力の法則

質量 $M$ の物体と質量 $m$ の物体が、距離 $r$ だけ離れているとき、この2つの物体の間には、互いに引き合う向きに次の大きさの力がはたらきます。

$F = G\frac{Mm}{r^2}$

ここで $G$ は万有引力定数と呼ばれる比例定数で、値はおよそ $6.67\times10^{-11}$ N・m²/kg²です。この式が表しているのは、力の大きさが両方の質量の積に比例し、距離の2乗に反比例するということです。距離が2倍になると、力の大きさは $\dfrac{1}{2^2}=\dfrac{1}{4}$ になる、ということに注意してください。

万有引力定数 $G$ の値は非常に小さいため、私たちの身の回りにある物体どうしの万有引力は極めて小さく、ふだん感じることはありません。しかし、地球や太陽のように質量が非常に大きい天体が関わると、万有引力は無視できない大きさになり、惑星や衛星の運動を支配する力になります。

ケプラーの法則

ニュートンが万有引力の法則を発見する前に、ケプラーは、当時の観測データをもとに、惑星の運動に関する3つの経験的な法則をまとめていました。

第一法則(だ円軌道の法則):惑星は、太陽を1つの焦点とする、だ円軌道を描いて運動する。

第二法則(面積速度一定の法則):太陽と惑星を結ぶ線分が、単位時間に掃く面積(面積速度)は常に一定である。この法則は、惑星が太陽に近いところでは速く動き、遠いところではゆっくり動くことを意味しています。

第三法則(調和の法則):惑星の公転周期 $T$ の2乗は、軌道の半長軸(だ円軌道のおおよその半径に相当する量)の3乗に比例する。同じ太陽のまわりを回るすべての惑星について、$\dfrac{T^2}{r^3}$ の値は共通の定数になる。

円軌道の場合のケプラーの第三法則の導出

ケプラーの法則は、もともとはだ円軌道について成り立つ法則ですが、ここでは簡単のため、円軌道(だ円のうち特別な場合)を回る惑星を考え、万有引力の法則からケプラーの第三法則を導いてみましょう。

質量 $M$ の中心天体(太陽など)のまわりを、質量 $m$ の惑星が、半径 $r$ の円軌道を角速度 $\omega$ で等速円運動しているとします。惑星を円運動させている向心力は、中心天体との間の万有引力そのものです。したがって、向心力の式と万有引力の式が等しいという関係が成り立ちます。

$\frac{GMm}{r^2} = mr\omega^2$

両辺を $m$ で割ります(質量 $m$ が両辺に含まれているので消去できます)。

$\frac{GM}{r^2} = r\omega^2$

これを $\omega^2$ について解くと、

$\omega^2 = \frac{GM}{r^3}$

角速度と周期の関係 $\omega=\dfrac{2\pi}{T}$ より $\omega^2 = \dfrac{4\pi^2}{T^2}$ なので、これを代入すると、

$\frac{4\pi^2}{T^2} = \frac{GM}{r^3}$

$T^2$ について解くと、

$T^2 = \frac{4\pi^2}{GM}r^3$

この式を見ると、$T^2$ が $r^3$ に比例しており、その比例定数 $\dfrac{4\pi^2}{GM}$ は中心天体の質量 $M$ だけで決まる(惑星自身の質量 $m$ にはよらない)ことがわかります。同じ中心天体のまわりを回るすべての惑星について、

$\frac{T^2}{r^3} = \frac{4\pi^2}{GM} = (\text{中心天体で決まる一定の値})$

が成り立ちます。これがケプラーの第三法則です。惑星ごとに軌道半径 $r$ や周期 $T$ は異なりますが、その比 $\dfrac{T^2}{r^3}$ はすべての惑星で共通の値になる、という驚くべき規則性を、万有引力の法則から導くことができました。

下のシミュレーションでは、軌道半径 $r$ と、中心天体の重力の強さを表す量($GM$ に相当するパラメータ)を変えられます。$r$ を変えても $\dfrac{T^2}{r^3}$ の値が一定に保たれることを確認してみましょう(この単元では、簡略化のため軌道を円として扱っています)。

例題

例題1(基本)

問題

質量 $M$、質量 $m$ の2つの物体が距離 $r$ だけ離れて存在するとき、はたらく万有引力の大きさを表す式を書きなさい。また、この2物体間の距離を3倍にすると、万有引力の大きさは何倍になるか答えなさい。

解答・解説を見る

万有引力の法則より、力の大きさは、

$F = G\frac{Mm}{r^2}$

距離を3倍にすると、新しい距離は $3r$ になります。これを式に代入すると、

$F' = G\frac{Mm}{(3r)^2} = G\frac{Mm}{9r^2} = \frac{1}{9}\times G\frac{Mm}{r^2} = \frac{1}{9}F$

したがって、距離を3倍にすると、万有引力の大きさはもとの $\dfrac{1}{9}$ 倍になります。万有引力が距離の2乗に反比例することから、距離をn倍にすると力は $\dfrac{1}{n^2}$ 倍になる、という関係を確認しておきましょう。

例題2(標準)

問題

太陽のまわりを回る地球の公転周期は1年、軌道半径(平均距離)を $r_{地球}$ とします。ある小惑星が、地球の軌道半径の4倍の軌道半径($r=4r_{地球}$)で太陽のまわりを円軌道で回っているとすると、この小惑星の公転周期は何年になるか求めなさい。

解答・解説を見る

ケプラーの第三法則より、同じ太陽のまわりを回る天体では、$\dfrac{T^2}{r^3}$ の値が共通です。地球について、

$\frac{T_{地球}^2}{r_{地球}^3} = \frac{1^2}{r_{地球}^3}$

小惑星について、

$\frac{T_{小惑星}^2}{r_{小惑星}^3} = \frac{T_{小惑星}^2}{(4r_{地球})^3} = \frac{T_{小惑星}^2}{64\,r_{地球}^3}$

この2つが等しいとおきます。

$\frac{1}{r_{地球}^3} = \frac{T_{小惑星}^2}{64\,r_{地球}^3}$

両辺に $r_{地球}^3$ を掛けると、

$1 = \frac{T_{小惑星}^2}{64}$

$T_{小惑星}^2 = 64$

$T_{小惑星} = \sqrt{64} = 8 \text{ 年}$

したがって、この小惑星の公転周期は8年です。軌道半径が4倍になると、周期は $4^{3/2}=8$ 倍になる、というケプラーの第三法則の関係を具体的に確認できました。

例題3(応用)

問題

地表付近すれすれを回る人工衛星(地球の半径を $R$、地表での重力加速度を $g$ とする)の周期を、万有引力の法則と向心力の関係を使って、$R$ と $g$ を用いて表しなさい。ただし、地球の質量を $M$、万有引力定数を $G$ とし、地表での重力加速度は $g=\dfrac{GM}{R^2}$ の関係を満たすものとします。

解答・解説を見る

地表すれすれを回る人工衛星は、半径がほぼ地球の半径 $R$ に等しい円軌道を回っていると考えます。万有引力が向心力の役割を果たすので、

$\frac{GMm}{R^2} = mR\omega^2$

($m$は人工衛星の質量です。)両辺を $m$ で割ると、

$\frac{GM}{R^2} = R\omega^2$

ここで、問題文に与えられた関係 $g=\dfrac{GM}{R^2}$ を使うと、左辺はちょうど $g$ に置き換えられます。

$g = R\omega^2$

$\omega^2 = \frac{g}{R}$

$\omega = \sqrt{\frac{g}{R}}$

周期は $T=\dfrac{2\pi}{\omega}$ の関係を使って、

$T = \frac{2\pi}{\omega} = 2\pi\sqrt{\frac{R}{g}}$

したがって、地表すれすれを回る人工衛星の周期は $T=2\pi\sqrt{\dfrac{R}{g}}$ と表せます。この式は、地球の質量や万有引力定数を直接使わずに、地球の半径と地表での重力加速度という、比較的なじみのある量だけで周期を表せることを示しています。

練習問題

問題

太陽のまわりを公転する惑星Xの軌道半径が、地球の軌道半径の9倍であるとき、惑星Xの公転周期は地球の何倍になるか求めなさい。

答え

ケプラーの第三法則 $\dfrac{T^2}{r^3}=$一定 より、$T^2 = r^3$ に比例するので、$r$ が9倍になると $T^2$ は $9^3=729$ 倍になる。したがって $T$ は $\sqrt{729}=27$ 倍になる。