物理 / 電気と磁気

交流回路

要点整理

交流とは何か

これまで扱ってきた電流は、向きも大きさも一定の直流でした。これに対して、家庭のコンセントに来ている電流のように、向きと大きさが周期的に変化する電流を交流と呼びます。

交流電源の電圧は、多くの場合、時間 $t$ の関数として次のように表されます。

$v(t) = V_0 \sin \omega t$

ここで $V_0$ は電圧の最大値(振幅)、$\omega$ は角周波数と呼ばれる量です。角周波数は、周波数 $f$(1秒間に繰り返す回数、単位Hz)と

$\omega = 2\pi f$

という関係で結ばれています。この式は、単振動を学んだときに出てきた角振動数とまったく同じ考え方です。

実効値

交流の電圧や電流は、時間とともに正にも負にも変化するため、単純に平均をとると $0$ になってしまい、大きさの目安として使えません。そこで使われるのが実効値という考え方です。

実効値とは、「同じ抵抗に流したときに、直流と同じ電力を消費するような値」として定義されます。電圧の最大値を $V_0$、電流の最大値を $I_0$ とすると、実効値 $V_e, I_e$ は、次の式で表されます。

$V_e = \dfrac{V_0}{\sqrt{2}}, \qquad I_e = \dfrac{I_0}{\sqrt{2}}$

$\sqrt{2}\approx1.41$ という数値は、$\sin$ 関数の2乗を1周期にわたって平均すると $\dfrac{1}{2}$ になるという数学的な事実からきています。家庭用電源の「100V」という表示は、この実効値のことを指しています(つまり実際の電圧の最大値は $100\times\sqrt{2}\approx141\,\text{V}$ まで達しています)。

抵抗における電圧と電流

抵抗 $R$ に交流電圧 $v(t)=V_0\sin\omega t$ をかけると、オームの法則はどの瞬間にもそのまま成り立つので、電流は

$i(t) = \dfrac{v(t)}{R} = \dfrac{V_0}{R}\sin\omega t$

となります。つまり、電流の最大値は $I_0=V_0/R$ で、電圧と電流は同じタイミングで最大・最小・$0$ になります。これを「電圧と電流は同位相である」と言います。

コイルにおける電圧と電流

コイル(インダクタンス $L$)に交流電圧をかけると、自己誘導のはたらきにより、電流は電圧より $90°$($\dfrac{\pi}{2}$)だけ遅れて変化します。電流の最大値 $I_0$ は、

$I_0 = \dfrac{V_0}{X_L}, \qquad X_L = \omega L$

という関係で表されます。$X_L$ を誘導性リアクタンスと呼び、コイルが交流の流れをどれだけ妨げるかを表す量です。抵抗と同じ単位($\Omega$)をもちますが、周波数 $\omega$ が大きいほど $X_L$ も大きくなる(高い周波数の交流ほど流れにくくなる)という特徴があります。

コンデンサーにおける電圧と電流

コンデンサー(静電容量 $C$)に交流電圧をかけると、電流は電圧より $90°$($\dfrac{\pi}{2}$)だけ進んで変化します。電流の最大値 $I_0$ は、

$I_0 = \dfrac{V_0}{X_C}, \qquad X_C = \dfrac{1}{\omega C}$

という関係で表されます。$X_C$ を容量性リアクタンスと呼びます。コイルの場合とは逆に、周波数 $\omega$ が大きいほど $X_C$ は小さくなる(高い周波数の交流ほど流れやすくなる)という特徴があります。

位相差のスライダーを動かして、抵抗・コイル・コンデンサーのそれぞれで電圧(青)と電流(赤)の波形がどのようにずれるかを確認しましょう。周波数 $f$ を大きくすると、同じ1秒間の中に波の数が増えることも確認できます。

交流の消費電力

コイルやコンデンサーでは、電圧と電流が $90°$ ずれているため、電力(電圧×電流)は1周期のうちで正になったり負になったりし、平均するとちょうど $0$ になります。これは、コイルやコンデンサーが電気エネルギーを吸収する時間帯と、たくわえたエネルギーを回路に返す時間帯が同じだけあるためです。したがって、コイルやコンデンサーだけでは、平均としてエネルギーを消費しません。

一方、抵抗では電圧と電流が同位相なので、電力は常に $0$ 以上になり、平均の消費電力は

$P = V_eI_e$

となります(これは $\cos\varphi=1$ の場合に相当します)。より一般的には、電圧と電流の位相差を $\varphi$ として、

$P = V_eI_e\cos\varphi$

と表されます。

例題

例題1(基本)

問題 最大値 $V_0=100\,\text{V}$、周波数 $f=50\,\text{Hz}$ の交流電源に、抵抗 $R=20\,\Omega$ をつないだ。角周波数 $\omega$、電流の最大値 $I_0$、電圧と電流の実効値 $V_e, I_e$ を求めよ。ただし $\sqrt{2}\approx1.41$ とする。

解答・解説を見る

角周波数を求める

$\omega = 2\pi f = 2\pi\times50 = 100\pi \approx 314\,\text{rad/s}$

電流の最大値を求める

抵抗では電圧と電流は同位相で、$I_0=V_0/R$ が成り立ちます。

$I_0 = \dfrac{100}{20} = 5.0\,\text{A}$

実効値を求める

$V_e = \dfrac{V_0}{\sqrt{2}} = \dfrac{100}{1.41} \approx 70.9 \approx 70.7\,\text{V}$

$I_e = \dfrac{I_0}{\sqrt{2}} = \dfrac{5.0}{1.41} \approx 3.5\,\text{A}$

答え: $\omega \approx 314\,\text{rad/s}$, $I_0=5.0\,\text{A}$, $V_e\approx70.7\,\text{V}$, $I_e\approx3.5\,\text{A}$

例題2(標準)

問題 自己インダクタンス $L=0.10\,\text{H}$ のコイルに、最大値 $V_0=50\,\text{V}$、周波数 $f=60\,\text{Hz}$ の交流電圧をかけた。誘導性リアクタンス $X_L$ と、電流の最大値 $I_0$ を求めよ。ただし $\pi\approx3.14$ とする。

解答・解説を見る

角周波数を求める

$\omega = 2\pi f = 2\pi\times60 = 120\pi \approx 376.8 \approx 377\,\text{rad/s}$

リアクタンスを求める

$X_L = \omega L = 377\times0.10 \approx 37.7\,\Omega$

電流の最大値を求める

$I_0 = \dfrac{V_0}{X_L} = \dfrac{50}{37.7} \approx 1.33\,\text{A}$

答え: $X_L\approx37.7\,\Omega$, $I_0\approx1.33\,\text{A}$

例題3(応用)

問題 静電容量 $C=20\,\mu\text{F}$ のコンデンサーに、最大値 $V_0=141\,\text{V}$、周波数 $f=50\,\text{Hz}$ の交流電圧をかけた。容量性リアクタンス $X_C$、電流の最大値 $I_0$、電流の実効値 $I_e$、そしてこのコンデンサーで消費される平均電力を求めよ。

解答・解説を見る

角周波数を求める

$\omega = 2\pi f = 2\pi\times50 = 100\pi \approx 314\,\text{rad/s}$

リアクタンスを求める

$X_C = \dfrac{1}{\omega C} = \dfrac{1}{314\times20\times10^{-6}}$

分母を計算します。

$314\times20\times10^{-6} = 6280\times10^{-6} = 6.28\times10^{-3}$

したがって、

$X_C = \dfrac{1}{6.28\times10^{-3}} \approx 159\,\Omega$

電流の最大値を求める

$I_0 = \dfrac{V_0}{X_C} = \dfrac{141}{159} \approx 0.887\,\text{A}$

電流の実効値を求める

$I_e = \dfrac{I_0}{\sqrt{2}} = \dfrac{0.887}{1.41} \approx 0.629\,\text{A}$

平均電力を求める

コンデンサーでは電圧と電流の位相差が $90°$ であり、$\cos90°=0$ なので、

$P = V_eI_e\cos90° = 0\,\text{W}$

電流は流れているにもかかわらず、平均としては電力を消費しないことに注意してください。

答え: $X_C\approx159\,\Omega$, $I_0\approx0.89\,\text{A}$, $I_e\approx0.63\,\text{A}$, $P=0\,\text{W}$

練習問題

問題 抵抗 $R=50\,\Omega$ に、実効値 $V_e=100\,\text{V}$、周波数 $f=50\,\text{Hz}$ の交流電圧をかけた。電流の実効値 $I_e$ と、抵抗で消費される平均電力 $P$ を求めよ。

答え

$I_e = \dfrac{V_e}{R} = \dfrac{100}{50} = 2.0\,\text{A}$

$P = V_eI_e = 100\times2.0 = 200\,\text{W}$