物理 / 熱力学

よくある間違い

間違い1: 温度をセルシウス度のまま計算してしまう

よくある誤答例

ボイル・シャルルの法則やpV=nRTの計算で、$27\ \mathrm{℃}$や$127\ \mathrm{℃}$といった値を、そのまま$T$の場所に代入してしまう。

なぜ間違いなのか

気体の法則における温度は、必ず絶対温度($\mathrm{K}$、ケルビン)でなければなりません。$\dfrac{pV}{T}=一定$のような比例関係は、$T=0\ \mathrm{K}$を原点とする絶対温度でしか成り立たないからです。セルシウス度は$-273\ \mathrm{℃}$を基準にしているため、そのまま比の計算に使うと、比例関係が崩れて答えが大きくずれてしまいます。

正しい考え方

計算を始める前に、必ず $T = t + 273$ を使ってすべての温度を絶対温度に変換する習慣をつけましょう。問題文に$\mathrm{℃}$で温度が与えられていたら、まっさきに$\mathrm{K}$に直す、というルールを決めてしまうのがおすすめです。

間違い2: 「気体がする仕事」と「気体がされる仕事」を混同する

よくある誤答例

気体が膨張して外部に $50\ \mathrm{J}$ の仕事をしたときに、熱力学第一法則 $\Delta U=Q+W$ の$W$に、そのまま$+50$を代入してしまう。

なぜ間違いなのか

このページの単元で使う熱力学第一法則 $\Delta U=Q+W$ の$W$は、「気体が外部からされた仕事」です。気体が膨張して外部に仕事をした場合、それは気体が外部から仕事をされたことの反対なので、符号はマイナスになります。「した」か「された」かで、同じ現象でも符号が逆転することを見落とすと、答えの符号がすべて反転してしまいます。

正しい考え方

まず、気体が膨張したのか圧縮されたのかを確認します。圧縮された→外部から仕事をされた→$W>0$膨張した→外部に仕事をした→$W<0$、という対応を、図(ピストンが押されているか押し返しているか)と結びつけて覚えると間違いにくくなります。「外部にした仕事」を$W_{by}$として先に求め、$W=-W_{by}$として第一法則に代入する、という2段階の手順を踏むと安全です。

間違い3: 熱を放出したときに$Q$を正の値のまま使ってしまう

よくある誤答例

「気体が$20\ \mathrm{J}$の熱を放出した」と書かれているのに、$\Delta U=Q+W$の$Q$に$+20$を代入してしまう。

なぜ間違いなのか

$Q$は「気体が吸収した熱量」であり、熱を吸収したときが正、熱を放出したときが負というルールで統一されています。「放出した」という言葉が出てきたら、符号を反転させる必要があります。

正しい考え方

問題文中の「吸収した」「与えられた」は$Q>0$、「放出した」「失った」「奪われた」は$Q<0$、と対応する日本語を意識しながら、符号を確定させてから式に代入しましょう。

間違い4: 定積変化なのに仕事があると思い込んでしまう

よくある誤答例

定積変化の問題で、圧力や温度の変化があるのを見て、$W_{by}=p\Delta V$を使って仕事を計算しようとしてしまう。

なぜ間違いなのか

仕事は体積の変化によって生まれるものです。定積変化では体積がまったく変化しない($\Delta V=0$)ので、圧力や温度がどれだけ変化しても、気体がする仕事もされる仕事も$0$です。圧力が変わっているからといって、仕事があるはずだと思い込んでしまうのが原因です。

正しい考え方

仕事の有無を判断するときは、圧力ではなく体積が変化したかどうかだけを見ます。定積変化では常に$W=0$、したがって$\Delta U=Q$が成り立つ、とセットで覚えておきましょう。

間違い5: 断熱変化と定積変化を混同する

よくある誤答例

「断熱変化だから体積は変化しない」、あるいは逆に「定積変化だから熱の出入りはない」と思い込んでしまう。

なぜ間違いなのか

断熱変化は「熱の出入りがない($Q=0$)」変化であり、体積が変化してもかまいません(むしろ、断熱膨張・断熱圧縮のように体積変化をともなうのが普通です)。一方、定積変化は「体積が変化しない($\Delta V=0$)」変化であり、熱の出入りはふつうにあります。この2つは、どちらも第一法則を単純化できる($\Delta U=W$、または$\Delta U=Q$)という共通点はありますが、単純化される理由(何が$0$になるか)がまったく異なります。

正しい考え方

断熱変化は「$Q=0$」、定積変化は「$W=0$」というように、どちらの量が$0$になるのかを意識して区別しましょう。断熱変化では体積も圧力も温度も変化してよく、定積変化では熱も圧力も温度も変化してよい、という点を図とセットで確認しておくと混同しにくくなります。

間違い6: 内部エネルギーの変化が過程によって違うと思ってしまう

よくある誤答例

同じ$n$、同じ$\Delta T$の変化なのに、定積変化と定圧変化とで$\Delta U$の値が違うはずだと考えて、それぞれ別の計算をしようとする。

なぜ間違いなのか

理想気体の内部エネルギーは、温度だけで決まる量です($U=\dfrac{3}{2}nRT$)。したがって、$\Delta U=\dfrac{3}{2}nR\Delta T$は、その変化が定積変化であっても定圧変化であっても、断熱変化であっても、同じ$n$と同じ$\Delta T$であれば、まったく同じ値になります。違ってくるのは$Q$と$W$の配分の仕方だけです。

正しい考え方

「$\Delta U$は温度変化だけで決まり、途中の経路にはよらない」という理想気体の性質を、公式として単独に覚えておきましょう。この性質のおかげで、定積変化での$\Delta U$の計算結果を、同じ$\Delta T$の定圧変化にもそのまま流用できます。

間違い7: p-V図のサイクルの向きと仕事の符号を取り違える

よくある誤答例

p-V図に描かれたサイクルの面積を計算して、それがどんな場合でも「気体が外部にした正の仕事」だと思い込んでしまう。

なぜ間違いなのか

p-V図の面積が表すのは仕事の大きさであって、符号(向き)は別に判断する必要があります。状態点が時計回りに一周する場合は、気体が正味で正の仕事を外部にしますが、反時計回りに一周する場合は、逆に気体が正味で仕事をされる(外部にする仕事は負になる)ことになります。

正しい考え方

面積の値を求めたら、必ずサイクルの向き(時計回りか反時計回りか)を確認し、時計回りなら仕事は正、反時計回りなら仕事は負、と判断しましょう。矢印の向きを図に書き込みながら考えると間違いにくくなります。

間違い8: 熱効率の分母に$Q_{out}$や$Q_{net}$を使ってしまう

よくある誤答例

熱効率を求める際に、$e=\dfrac{W}{Q_{out}}$としたり、$e=\dfrac{W}{Q_{in}-Q_{out}}$($=\dfrac{W}{W}=1$になってしまう)としたりする。

なぜ間違いなのか

熱効率は「投入した熱のうち、どれだけを仕事に変換できたか」という割合です。分母には、熱機関に入力された熱量である$Q_{in}$を置く必要があります。排出した熱$Q_{out}$や、正味の熱量($=W$そのもの)を分母にしてしまうと、意味が通らない値になってしまいます。

正しい考え方

熱効率の式は $e=\dfrac{W}{Q_{in}}$、これは「$1$サイクルで受け取った熱のうち、仕事として取り出せた割合」だと意味づけて覚えましょう。$Q_{out}$は$e=1-\dfrac{Q_{out}}{Q_{in}}$の形で登場しますが、この場合も分母は$Q_{in}$のままであることに注意してください。