物理 / 原子

核反応と核エネルギー

要点整理

原子核どうしが衝突したり、中性子を吸収したりして、別の原子核に変わる反応を核反応と呼びます。前のページで学んだ放射性崩壊も核反応の一種ですが、このページでは、核分裂と核融合という、大きなエネルギーを生み出す核反応を扱います。

核反応式でも保存される量

核反応の前後では、化学反応の前後で原子の種類と数が変わらないのと同じように、反応に関わる粒子全体の質量数の合計原子番号の合計が変わりません。

$\sum A_{\text{前}} = \sum A_{\text{後}}, \qquad \sum Z_{\text{前}} = \sum Z_{\text{後}}$

核反応式を作るときや、反応式の中に出てくる未知の原子核が何であるかを求めるときは、まずこの2つの保存(質量数の保存、原子番号の保存)が成り立っているかを確認することが基本になります。

核分裂

ウラン235のような重い原子核に中性子を1個当てると、原子核が2つの軽い原子核(と、いくつかの中性子)に分裂することがあります。この現象を核分裂と呼びます。例えば、次のような反応が知られています。

$n + {}^{235}_{92}\mathrm{U} \longrightarrow {}^{141}_{56}\mathrm{Ba} + {}^{92}_{36}\mathrm{Kr} + 3n$

核融合

反対に、水素の同位体のような軽い原子核どうしが、非常な高温・高圧の環境で衝突して合体し、より重い1つの原子核になる現象を核融合と呼びます。太陽をはじめとする恒星は、核融合反応によってエネルギーを生み出しています。例えば、重水素($^2\mathrm{H}$)と三重水素($^3\mathrm{H}$)が融合してヘリウム4になる反応は、次のように表されます。

$^2_1\mathrm{H} + {}^3_1\mathrm{H} \longrightarrow {}^4_2\mathrm{He} + n$

核反応で生まれる莫大なエネルギー

核分裂や核融合が起こると、反応の前後で全体の質量がわずかに変化します。原子核をつくる結合エネルギーのページで学んだように、この質量の変化 $\Delta m$(反応前の全質量から反応後の全質量を引いたもの)は、

$E = \Delta m\, c^2$

の関係にしたがって、エネルギーとして放出されます。核分裂では重い原子核が、核子1個あたりの結合エネルギーがより大きい(より安定な)中程度の重さの原子核に分かれることでエネルギーが放出され、核融合では軽い原子核が、同じく核子1個あたりの結合エネルギーがより大きい、少し重い原子核になることでエネルギーが放出されます。どちらも、核子1個あたりの結合エネルギーがより大きい、より安定な原子核に近づく変化であるという点は共通しています。

1回の核反応で変化する質量はごくわずかですが、$c^2$ がとても大きい($9.0\times10^{16}\ \mathrm{m^2/s^2}$)ため、化学反応(原子どうしの結合の組み替え)で得られるエネルギーとは比べものにならないほど大きなエネルギーが得られます。これが、原子力発電や核兵器、そして太陽が輝き続けるエネルギー源にもなっています。

例題

例題1(基本)

問題

次の核分裂反応式について、質量数と原子番号がそれぞれ反応の前後で保存されていることを確かめよ。

$n + {}^{235}_{92}\mathrm{U} \longrightarrow {}^{141}_{56}\mathrm{Ba} + {}^{92}_{36}\mathrm{Kr} + 3n$

解答・解説を見る

質量数(左上の数)の確認

反応前:中性子の質量数は $1$、ウランの質量数は $235$ なので、合計は、

$1 + 235 = 236$

反応後:バリウムの質量数は $141$、クリプトンの質量数は $92$、中性子3個の質量数の合計は $3\times1=3$ なので、

$141 + 92 + 3 = 236$

反応前後で $236$ どうし、一致しています。

原子番号(左下の数)の確認

反応前:中性子の原子番号は $0$、ウランの原子番号は $92$ なので、合計は、

$0 + 92 = 92$

反応後:バリウムの原子番号は $56$、クリプトンの原子番号は $36$、中性子の原子番号は $0$ なので、

$56 + 36 + 0 = 92$

反応前後で $92$ どうし、一致しています。

答え:質量数・原子番号のどちらも、反応の前後で保存されている

例題2(標準)

問題

ある核分裂反応で失われた質量が $\Delta m = 0.215\ \mathrm{u}$ であった。このとき放出されるエネルギーをジュールと $\mathrm{MeV}$ で求めよ。$1\ \mathrm{u}=1.66\times10^{-27}\ \mathrm{kg}$、$c=3.0\times10^8\ \mathrm{m/s}$、$1\ \mathrm{MeV}=1.6\times10^{-13}\ \mathrm{J}$ とする。

解答・解説を見る

まず質量欠損をキログラムに直します。

$\Delta m = 0.215\times 1.66\times10^{-27} \approx 3.57\times10^{-28}\ \mathrm{kg}$

放出されるエネルギーは、

$E = \Delta m\, c^2 = 3.57\times10^{-28}\times(3.0\times10^8)^2 = 3.57\times10^{-28}\times9.0\times10^{16}$

$E \approx 32.1\times10^{-12} = 3.21\times10^{-11}\ \mathrm{J}$

$\mathrm{MeV}$ に直すと、

$E = \frac{3.21\times10^{-11}}{1.6\times10^{-13}} \approx 200\ \mathrm{MeV}$

答え:約 $3.21\times10^{-11}\ \mathrm{J}$(約 $200\ \mathrm{MeV}$)

これは、ウラン235が1回核分裂するときに放出される、実際のエネルギーの大きさとほぼ一致する値です。原子核1個の反応でこれだけのエネルギーが出るというのは、化学反応と比べてけた違いに大きいエネルギーです。

例題3(応用)

問題

重水素($^2\mathrm{H}$、質量 $2.0141\ \mathrm{u}$)と三重水素($^3\mathrm{H}$、質量 $3.0160\ \mathrm{u}$)が核融合して、ヘリウム4($^4\mathrm{He}$、質量 $4.0026\ \mathrm{u}$)と中性子($n$、質量 $1.0087\ \mathrm{u}$)ができる反応

$^2_1\mathrm{H} + {}^3_1\mathrm{H} \longrightarrow {}^4_2\mathrm{He} + n$

について、放出されるエネルギーを $\mathrm{MeV}$ で求めよ。$1\ \mathrm{u}=1.66\times10^{-27}\ \mathrm{kg}$、$c=3.0\times10^8\ \mathrm{m/s}$、$1\ \mathrm{MeV}=1.6\times10^{-13}\ \mathrm{J}$ とする。

解答・解説を見る

反応前の質量の合計は、

$2.0141 + 3.0160 = 5.0301\ \mathrm{u}$

反応後の質量の合計は、

$4.0026 + 1.0087 = 5.0113\ \mathrm{u}$

質量欠損は、

$\Delta m = 5.0301 - 5.0113 = 0.0188\ \mathrm{u}$

キログラムに直すと、

$\Delta m = 0.0188\times1.66\times10^{-27} \approx 3.12\times10^{-29}\ \mathrm{kg}$

放出されるエネルギーは、

$E = \Delta m\, c^2 \approx 3.12\times10^{-29}\times9.0\times10^{16} \approx 2.81\times10^{-12}\ \mathrm{J}$

$\mathrm{MeV}$ に直すと、

$E = \frac{2.81\times10^{-12}}{1.6\times10^{-13}} \approx 17.6\ \mathrm{MeV}$

答え:約 $17.6\ \mathrm{MeV}$

このように核融合反応でも、核分裂と同じように莫大なエネルギーが1回の反応で放出されます。この重水素と三重水素の核融合反応は、太陽のエネルギー源の一部であり、核融合発電の実現に向けた研究でも中心的な反応です。

練習問題

問題

重水素どうしが核融合してヘリウム3と中性子ができる反応

$^2_1\mathrm{H} + {}^2_1\mathrm{H} \longrightarrow {}^3_2\mathrm{He} + n$

について、質量数・原子番号が保存されていることを確かめよ。また、$^2\mathrm{H}$ の質量を $2.0141\ \mathrm{u}$、$^3\mathrm{He}$ の質量を $3.0160\ \mathrm{u}$、中性子の質量を $1.0087\ \mathrm{u}$ として、放出されるエネルギーを $\mathrm{MeV}$ で求めよ。$1\ \mathrm{u}=1.66\times10^{-27}\ \mathrm{kg}$、$c=3.0\times10^8\ \mathrm{m/s}$、$1\ \mathrm{MeV}=1.6\times10^{-13}\ \mathrm{J}$ とする。

答え

質量数:反応前 $2+2=4$、反応後 $3+1=4$ で一致。原子番号:反応前 $1+1=2$、反応後 $2+0=2$ で一致。

反応前の質量の合計 $=2\times2.0141=4.0282\ \mathrm{u}$、反応後の質量の合計 $=3.0160+1.0087=4.0247\ \mathrm{u}$

$\Delta m = 4.0282-4.0247=0.0035\ \mathrm{u}$

$\Delta m$(kg)$\approx0.0035\times1.66\times10^{-27}\approx5.81\times10^{-30}\ \mathrm{kg}$

$E=\Delta m\, c^2\approx5.81\times10^{-30}\times9.0\times10^{16}\approx5.23\times10^{-13}\ \mathrm{J}\approx3.3\ \mathrm{MeV}$