物理 / 原子
放射性崩壊と半減期
要点整理
ウランやラジウムなどの原子核の中には、不安定で、時間がたつと自然に別の原子核に変化してしまうものがあります。この現象を放射性崩壊と呼び、このとき放出される粒子や電磁波を放射線と呼びます。
放射性崩壊の種類
放射性崩壊には、主に次の3種類があります。
- α崩壊:原子核がヘリウムの原子核($^4_2\mathrm{He}$、陽子2個・中性子2個)を1個放出する崩壊です。放出されるヘリウム原子核をα線と呼びます。α崩壊が起こると、もとの原子核の質量数は4減り、原子番号は2減ります。
- β崩壊:原子核の中の中性子が1個、陽子と電子に変わり、その電子が原子核の外に放出される崩壊です。放出される電子をβ線と呼びます。β崩壊が起こると、質量数は変わりませんが、中性子が1個減って陽子が1個増えるので、原子番号が1増えます。
- γ崩壊:α崩壊やβ崩壊の直後などに、まだエネルギーの高い(不安定な)状態にある原子核が、余分なエネルギーを電磁波として放出して、より安定な状態に落ち着く変化です。放出される電磁波をγ線と呼びます。γ崩壊では、質量数も原子番号も変化しません。
半減期
放射性崩壊がいつ起こるかは、1個1個の原子核について予測することはできません。しかし、非常にたくさんの原子核を集めて統計的に見ると、ある一定の時間がたつごとに、崩壊せずに残っている原子核の数が半分になるという、規則正しい性質があることがわかっています。
もとの原子核の数が半分になるまでにかかる時間を半減期と呼び、記号 $T$ で表します。半減期は、放射性物質の種類ごとに決まった値を持ちます。
時刻 $t=0$ での原子核の数を $N_0$、時刻 $t$ での(まだ崩壊していない)原子核の数を $N$ とすると、
$N = N_0\left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{T}}$
という式が成り立ちます。この式の意味を確認してみましょう。$t=T$(半減期が1回経過)を代入すると、指数部分は $\dfrac{T}{T}=1$ になるので $N=N_0\times\dfrac{1}{2}$、つまりちょうど半分になります。$t=2T$(半減期が2回経過)を代入すると、指数部分は $2$ になるので $N=N_0\times\left(\dfrac{1}{2}\right)^2=N_0\times\dfrac{1}{4}$、つまり半分の、さらに半分になります。このように、半減期が経過するたびに、残っている量はそのたびごとに半分になっていきます。
注意したいのは、半減期の2倍の時間がたっても、原子核が「すべてなくなる」わけではないということです。$\left(\dfrac{1}{2}\right)^{\frac{t}{T}}$ は $t$ がどれだけ大きくなっても、理論上はゼロにはなりません。半減期は、あくまで「半分になる」までの時間であって、「なくなる」までの時間ではないことに注意しましょう。
指数の部分がきれいな整数にならない場合は、常用対数($\log_{10}$)を使って計算します。$\log_{10}2 \approx 0.301$ という値は、問題文で与えられることが多いので、覚えておくと便利です。
下のシミュレーションで、半減期 $T$ を変えたときに、残存量 $N$ が時間とともにどのように減っていくか確認してみましょう。
例題
例題1(基本)
問題
半減期が $8$ 日の放射性物質が $800$ 個ある。$24$ 日後には何個残っているか。
解答・解説を見る
半減期の式 $N = N_0\left(\dfrac{1}{2}\right)^{\frac{t}{T}}$ に、$N_0=800$、$t=24$、$T=8$ を代入します。
まず指数部分を計算すると、
$\frac{t}{T} = \frac{24}{8} = 3$
したがって、
$N = 800\times\left(\frac{1}{2}\right)^3 = 800\times\frac{1}{8} = 100$
答え:$100$ 個
例題2(標準)
問題
ある放射性物質を $30$ 年間放置したところ、残った量はもとの $\dfrac{1}{8}$ になっていた。この物質の半減期を求めよ。
解答・解説を見る
半減期の式より、
$\frac{N}{N_0} = \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{T}}$
問題文より $\dfrac{N}{N_0} = \dfrac{1}{8}$、$t=30$ です。$\dfrac{1}{8} = \left(\dfrac{1}{2}\right)^3$ と書けるので、
$\left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{T}} = \left(\frac{1}{2}\right)^3$
両辺の指数を比べると、
$\frac{t}{T} = 3$
$t=30$ を代入すると、
$\frac{30}{T} = 3$
$T = \frac{30}{3} = 10\ \text{年}$
答え:半減期は $10$ 年
例題3(応用)
問題
炭素14の半減期は $5730$ 年である。ある試料の炭素14の量が、もとの量の $10\%$ まで減っているとすると、その試料が生成されてからおよそ何年たっているか。$\log_{10}2 = 0.301$ として求めよ。
解答・解説を見る
半減期の式より、
$\frac{N}{N_0} = \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{T}}$
$\dfrac{N}{N_0}=0.1$ なので、
$0.1 = \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{T}}$
$0.1 = \dfrac{1}{8}$ のようにきれいな分数にならないので、両辺の常用対数をとります。
$\log_{10} 0.1 = \frac{t}{T}\log_{10}\frac{1}{2}$
左辺は $\log_{10}0.1 = \log_{10}10^{-1} = -1$ です。右辺の $\log_{10}\dfrac{1}{2}$ は、
$\log_{10}\frac{1}{2} = -\log_{10}2 = -0.301$
したがって、
$-1 = \frac{t}{T}\times(-0.301)$
両辺を $-0.301$ で割ると、
$\frac{t}{T} = \frac{1}{0.301} \approx 3.32$
$T=5730$ を代入すると、
$t \approx 5730\times 3.32 \approx 19000\ \text{年}$
答え:およそ $1.9\times10^4$ 年(約19000年)前
このように、指数部分がきれいな整数にならない場合は、対数を使って解くことになります。これは、実際の炭素年代測定で使われている考え方そのものです。
練習問題
問題
半減期が $4$ 時間の放射性物質が $1600$ 個ある。$20$ 時間後には何個残っているか。
答え
$\dfrac{t}{T}=\dfrac{20}{4}=5$
$N = 1600\times\left(\dfrac{1}{2}\right)^5 = 1600\times\dfrac{1}{32} = 50$ 個