物理基礎 / 電気
静電気と電流の正体
要点整理
摩擦電気
下敷きを髪の毛でこすると、下敷きが髪の毛や小さな紙片を引きつけるようになることがあります。これは、物と物をこすり合わせる(摩擦する)ことで、物体に電気がたまるために起こる現象で、この電気を静電気といいます。
物質は、目に見えないくらい小さな粒でできていて、その中には電気を帯びた粒(電子)が含まれています。2種類の異なる物質をこすり合わせると、一方の物質から他方の物質へ、この電子の一部が移動します。電子は負(マイナス)の電気を帯びているので、
- 電子を受け取った側の物質は、電子が増えた分だけ負に帯電します。
- 電子を渡した側の物質は、電子が減った分だけ正(プラス)に帯電します。
このとき大事なのは、電気そのものが新しく生まれたり消えたりするわけではなく、もともと物質の中にあった電子が移動しているだけだという点です。この考え方を電気量保存の考え方といいます。
クーロンの法則
電気を帯びた2つの物体(以下では、大きさを考えずに1点に電気量が集中しているとみなした点電荷として扱います)の間には、力が働きます。この力をクーロン力といい、次の性質があります。
- 同符号(正と正、または負と負)の電荷どうしは、反発し合います(斥力)。
- 異符号(正と負)の電荷どうしは、引き合います(引力)。
このクーロン力の大きさ $F$ は、2つの点電荷の電気量の大きさ($q_1$、$q_2$)と、電荷間の距離 $r$ によって、次の式で決まることが実験によって分かっています。これをクーロンの法則といいます。
$ F = k \frac{|q_1 q_2|}{r^2} $
ここで、$F$ の単位はN(ニュートン)、$q_1$・$q_2$ の単位はC(クーロン)、$r$ の単位はm(メートル)です。$k$ は比例定数で、真空中(や空気中)では、
$ k \approx 9.0 \times 10^{9}\ \text{N}\cdot\text{m}^2/\text{C}^2 $
という値になります。$|q_1 q_2|$ のように絶対値がついているのは、この式で求まる $F$ が力の大きさだけを表しており、符号(向き)を表していないためです。引力か斥力かは、この式とは別に、2つの電荷の符号を見て判断する必要があります。
また、分母が $r^2$(距離の2乗)になっていることにも注意してください。これは「距離が2倍になると、力の大きさは $\dfrac{1}{2^2} = \dfrac{1}{4}$ 倍になる」というように、距離が離れるほど急激に力が弱くなることを意味しています。
下のシミュレーションで、2つの点電荷の電気量と距離を変えて、働く力の大きさと向き(引力か斥力か)がどう変わるかを確かめてみましょう。
電流の正体
金属の導線の中では、原子から離れて自由に動き回ることができる自由電子がたくさん存在しています。導線に電圧をかけると、この自由電子が一斉に動き出します。これが、金属を流れる電流の正体です。
ここで、多くの人がつまずきやすい点があります。それは、電流の向きと自由電子が動く向きが逆になっているということです。電流の向きは、歴史的に「正の電気が移動する向き」と定義されました。しかし、実際に金属の中を移動しているのは、負の電気を帯びた自由電子です。負の電気は、電流の向きとは反対方向に引き寄せられて動くため、
$ \text{電流の向き} = -(\text{自由電子が動く向き}) $
という、向きが逆の関係になります。つまり、電流の向きに電子そのものが流れているわけではなく、電子が電流と逆向きに移動することによって、電流という現象が実現されているのです。
例題
例題1(基本)
問題
帯電量 $+2.0 \times 10^{-6}\ \text{C}$ の小球Aと、帯電量 $-3.0 \times 10^{-6}\ \text{C}$ の小球Bが、10cm離れて置かれています。両者の間に働く力の大きさを求めなさい。また、この力は引力・斥力のどちらですか。$k = 9.0 \times 10^{9}\ \text{N}\cdot\text{m}^2/\text{C}^2$ とします。
解答・解説を見る
力の大きさを求める
まず、距離の単位をメートルに直します。
$ r = 10\ \text{cm} = 0.10\ \text{m} $
クーロンの法則 $F = k \dfrac{|q_1 q_2|}{r^2}$ に、$q_1 = 2.0 \times 10^{-6}\ \text{C}$、$q_2 = 3.0 \times 10^{-6}\ \text{C}$(大きさのみを使うので符号は外します)、$r = 0.10\ \text{m}$ を代入します。
まず分子を計算します。
$ |q_1 q_2| = (2.0 \times 10^{-6}) \times (3.0 \times 10^{-6}) = 6.0 \times 10^{-12} $
これに $k$ をかけます。
$ k \times |q_1 q_2| = 9.0 \times 10^{9} \times 6.0 \times 10^{-12} = 54 \times 10^{-3} = 5.4 \times 10^{-2} $
次に分母を計算します。
$ r^2 = (0.10)^2 = 0.010 $
最後に、分子を分母で割ります。
$ F = \frac{5.4 \times 10^{-2}}{1.0 \times 10^{-2}} = 5.4\ \text{N} $
引力か斥力かを判断する
小球Aは正、小球Bは負で、符号が異なるので、この力は引力です。
答え: 力の大きさ 5.4 N、引力
例題2(標準)
問題
同じ大きさの電気量 $+q$ を帯びた小球2個が、距離 $r$ だけ離れて置かれ、働く力の大きさが $F$ でした。この2個の小球の距離を3倍にすると、力の大きさは何倍になりますか。
解答・解説を見る
クーロンの法則 $F = k \dfrac{q^2}{r^2}$ で、距離だけを3倍にした場合を考えます。新しい距離を $r' = 3r$ とすると、新しい力の大きさ $F'$ は、
$ F' = k \frac{q^2}{(3r)^2} $
分母を計算します。$(3r)^2 = 9r^2$ なので、
$ F' = k \frac{q^2}{9r^2} = \frac{1}{9} \times \left(k \frac{q^2}{r^2}\right) = \frac{1}{9} F $
答え: $\dfrac{1}{9}$ 倍(9分の1)
例題3(応用)
問題
点電荷 $+4.0 \times 10^{-6}\ \text{C}$ と点電荷 $Q$ を20cm離して置いたところ、8.1Nの斥力(反発する力)が働きました。$Q$ の電気量の大きさと符号を求めなさい。$k = 9.0 \times 10^{9}\ \text{N}\cdot\text{m}^2/\text{C}^2$ とします。
解答・解説を見る
符号を判断する
斥力(反発する力)が働いているので、2つの電荷は同符号です。一方の電荷は $+4.0 \times 10^{-6}\ \text{C}$(正)なので、$Q$ も正の電荷です。
大きさを求める
距離をメートルに直します。
$ r = 20\ \text{cm} = 0.20\ \text{m} $
クーロンの法則 $F = k \dfrac{q_1 Q}{r^2}$ を、$Q$ について解き直します。両辺に $r^2$ をかけてから $k q_1$ で割ると、
$ Q = \frac{F r^2}{k q_1} $
ここに、$F = 8.1\ \text{N}$、$r^2 = (0.20)^2 = 0.040$、$k = 9.0 \times 10^{9}$、$q_1 = 4.0 \times 10^{-6}$ を代入します。まず分母を計算します。
$ k q_1 = 9.0 \times 10^{9} \times 4.0 \times 10^{-6} = 36 \times 10^{3} = 3.6 \times 10^{4} $
次に分子を計算します。
$ F r^2 = 8.1 \times 0.040 = 0.324 $
最後に割り算をします。
$ Q = \frac{0.324}{3.6 \times 10^{4}} = 9.0 \times 10^{-6}\ \text{C} $
答え: $Q = +9.0 \times 10^{-6}\ \text{C}$(正の電荷)
練習問題
問題
$+5.0 \times 10^{-6}\ \text{C}$ と $-5.0 \times 10^{-6}\ \text{C}$ の点電荷が5.0cm離れて置かれています。働く力の大きさを求め、引力・斥力のどちらかも答えなさい。$k = 9.0 \times 10^{9}\ \text{N}\cdot\text{m}^2/\text{C}^2$ とします。
答え
$r = 0.050\ \text{m}$、$r^2 = 0.0025$
$F = \dfrac{9.0 \times 10^{9} \times (5.0 \times 10^{-6}) \times (5.0 \times 10^{-6})}{0.0025} = 90\ \text{N}$
符号が異なるので引力です。
答え: 90 N、引力