物理 / 電気と磁気
電場と電位
要点整理
電場とは何か
物理基礎では、2つの電荷の間にはたらく力の大きさを、クーロンの法則
$F = k\dfrac{Qq}{r^2}$
で計算しました。ここで $k$ はクーロンの法則の比例定数で、真空中では $k = 9.0 \times 10^9 \, \text{N・m}^2/\text{C}^2$ です。$Q, q$ は2つの電荷の電気量、$r$ は電荷間の距離です。
この式は「2つの電荷があって初めて力が生まれる」という見方をしています。しかし物理学では、もう1つの見方をします。それは、「1つの電荷 $Q$ は、そのまわりの空間の性質を変化させていて、その空間に別の電荷 $q$ を置いたときに初めて力として現れる」という見方です。この「空間の性質」のことを電場(でんば)と呼びます。
電場の強さは、次のように定義されます。
$E = \dfrac{F}{q}$
これは、「電場のある点に電気量 $q$ の電荷(これを試験電荷と呼びます)を置いたときに、その電荷が受ける力 $F$ を、電気量 $q$ で割ったもの」です。つまり電場とは「単位電気量(+1C)あたりが受ける力の大きさ」のことです。電場は力の向きと同じ向きをもつベクトル量で、単位は $\text{N/C}$(ニュートン毎クーロン)です。
点電荷のつくる電場
電気量 $Q$ の点電荷から距離 $r$ だけ離れた点に、電気量 $q$ の試験電荷を置いたとします。このときクーロンの法則より、試験電荷が受ける力は
$F = k\dfrac{Qq}{r^2}$
です。電場の定義 $E = F/q$ にこれを代入すると、
$E = \dfrac{F}{q} = \dfrac{1}{q} \times k\dfrac{Qq}{r^2} = k\dfrac{Q}{r^2}$
となります。試験電荷の電気量 $q$ が分子と分母で約分されて消えることに注目してください。これはとても大切なことで、「電場はその場所に置く試験電荷の大きさによらず、電場をつくっている電荷 $Q$ と距離 $r$ だけで決まる」ということを意味しています。電場の向きは、$Q$ が正電荷なら $Q$ から遠ざかる向き、負電荷なら $Q$ に近づく向きです。
電位とは何か
力にはそれに対応する位置エネルギーがあるように、電場にも対応する量があります。それが電位です。電場のある点に電気量 $q$ の電荷を置いたときの位置エネルギー(電気的な位置エネルギー)を $U$ とすると、電位 $V$ は
$V = \dfrac{U}{q}$
と定義されます。つまり電位とは「単位電気量(+1C)あたりがもつ電気的な位置エネルギー」です。電場がベクトルだったのに対し、電位は向きをもたないスカラー量である点に注意してください。単位はボルト(V)で、$1\,\text{V} = 1\,\text{J/C}$ です。
点電荷 $Q$ から距離 $r$ だけ離れた点の電位は、次の式で表されます。
$V = k\dfrac{Q}{r}$
無限遠(とても遠く離れた場所)の電位を $0$ とした場合の式です。$Q$ が正なら $V$ は正、$Q$ が負なら $V$ は負になります。
電場と電位の関係(一様な電場の場合)
平行板電極のように、電場の向きと大きさが場所によらず一定になっている電場を「一様な電場」と呼びます。一様な電場 $E$ の中で、電場の向きに沿って距離 $d$ だけ離れた2点の電位差(電位の差)を $V$ とすると、次の関係が成り立ちます。
$E = \dfrac{V}{d}$
この式は、電場の単位が $\text{N/C}$ だけでなく $\text{V/m}$(ボルト毎メートル)でも表せることを示しています。実際、$\text{N/C}$ と $\text{V/m}$ は同じ単位です。この式は次のコンデンサーの単元で重要な役割を果たします。
電気力がする仕事と位置エネルギー
電気量 $q$ の電荷が、電位 $V_A$ の点Aから電位 $V_B$ の点Bまで移動したとき、電気力がする仕事 $W$ は
$W = q(V_A - V_B)$
で表されます。特に、無限遠(電位0)を基準にとれば、電位 $V$ の点にある電気量 $q$ の電荷がもつ電気的な位置エネルギーは
$U = qV$
となります。ここで注意したいのは、$q$ が負の電荷の場合、$V$ が正であっても $U$ は負になるということです。符号の扱いは後の「よくある間違い」でも詳しく説明します。
重ね合わせの原理
電荷が複数ある場合、ある点での電場は、それぞれの電荷が単独でつくる電場をベクトルとして足し合わせたものになります。電位の場合は、それぞれの電荷がつくる電位をスカラーとして(つまり普通の数として、正負に注意して)足し合わせます。これを重ね合わせの原理と呼びます。電位の足し合わせは向きを考えなくてよい分、電場の足し合わせより計算が簡単になることが多いです。
このシミュレーションで距離 $r$ を大きくすると、電場 $E$ は $r^2$ に反比例して急激に小さくなる一方、電位 $V$ は $r$ に反比例するのでそれよりゆるやかに小さくなることを確かめてみましょう。
例題
例題1(基本)
問題 真空中に電気量 $Q = 2.0 \times 10^{-8}\,\text{C}$ の点電荷がある。この点電荷から $r = 0.30\,\text{m}$ 離れた点の電場の強さを求めよ。ただし、クーロンの法則の比例定数を $k = 9.0 \times 10^9\,\text{N・m}^2/\text{C}^2$ とする。
解答・解説を見る
点電荷のつくる電場の式 $E = k\dfrac{Q}{r^2}$ に、与えられた数値を代入します。
$E = 9.0 \times 10^9 \times \dfrac{2.0 \times 10^{-8}}{(0.30)^2}$
まず分子を計算します。
$9.0 \times 10^9 \times 2.0 \times 10^{-8} = 18 \times 10^{1} = 180$
次に分母を計算します。
$(0.30)^2 = 0.09$
したがって、
$E = \dfrac{180}{0.09} = 2000 = 2.0 \times 10^3 \,\text{N/C}$
答え: $E = 2.0 \times 10^3\,\text{N/C}$
例題2(標準)
問題 例題1と同じ点電荷($Q = 2.0 \times 10^{-8}\,\text{C}$)から $r = 0.30\,\text{m}$ 離れた点の電位を求めよ。また、その点に電気量 $q = 1.0 \times 10^{-9}\,\text{C}$ の点電荷を置いたときの電気的な位置エネルギーを求めよ。
解答・解説を見る
電位を求める
点電荷のつくる電位の式 $V = k\dfrac{Q}{r}$ に数値を代入します。
$V = 9.0 \times 10^9 \times \dfrac{2.0 \times 10^{-8}}{0.30}$
分子は例題1と同じく $180$ です。
$V = \dfrac{180}{0.30} = 600 = 6.0 \times 10^2 \,\text{V}$
位置エネルギーを求める
位置エネルギーの式 $U = qV$ に、いま求めた $V = 600\,\text{V}$ と与えられた $q = 1.0 \times 10^{-9}\,\text{C}$ を代入します。
$U = qV = 1.0 \times 10^{-9} \times 600 = 6.0 \times 10^{-7} \,\text{J}$
答え: $V = 6.0 \times 10^2\,\text{V}$, $U = 6.0 \times 10^{-7}\,\text{J}$
例題3(応用)
問題 一直線上に、電気量 $Q_1 = 4.0 \times 10^{-8}\,\text{C}$ の点電荷Aと、電気量 $Q_2 = 1.0 \times 10^{-8}\,\text{C}$ の点電荷Bが $0.30\,\text{m}$ 離れて置かれている。どちらも正の電荷である。AとBを結ぶ線分上で、電場の強さが $0$ になる点は、Aから何mの位置か。
解答・解説を見る
状況を整理する
AとBはどちらも正の電荷なので、2つの点電荷にはさまれた領域では、Aがつくる電場は「Aから遠ざかる向き」、Bがつくる電場は「Bから遠ざかる向き」となり、互いに逆向きになります。したがって、AB間のどこかで2つの電場の大きさが等しくなり、打ち消し合って $0$ になる点が存在します。
式を立てる
Aから $x\,\text{m}$ の点(この点はBからは $0.30 - x\,\text{m}$ の距離)で電場が $0$ になるとします。この点でのAによる電場の大きさとBによる電場の大きさが等しいという条件を立てます。
$k\dfrac{Q_1}{x^2} = k\dfrac{Q_2}{(0.30 - x)^2}$
両辺の $k$ を消去します。
$\dfrac{Q_1}{x^2} = \dfrac{Q_2}{(0.30 - x)^2}$
数値を代入します。
$\dfrac{4.0 \times 10^{-8}}{x^2} = \dfrac{1.0 \times 10^{-8}}{(0.30 - x)^2}$
$10^{-8}$ を両辺で消去すると、
$\dfrac{4.0}{x^2} = \dfrac{1.0}{(0.30 - x)^2}$
これを整理すると、
$4.0 \times (0.30 - x)^2 = x^2$
両辺の平方根をとります(AB間では $0 < x < 0.30$ なので、$0.30-x > 0$ であることに注意して、正の平方根同士を比べます)。
$2.0 \times (0.30 - x) = x$
かっこを展開します。
$0.60 - 2.0x = x$
$x$ の項を右辺に集めます。
$0.60 = 3.0x$
$x = 0.20 \,\text{m}$
検算
$x = 0.20\,\text{m}$ のとき、Bからの距離は $0.30 - 0.20 = 0.10\,\text{m}$ です。
Aによる電場: $k\dfrac{4.0\times10^{-8}}{(0.20)^2} = k \times \dfrac{4.0\times10^{-8}}{0.04} = k \times 1.0\times10^{-6}$
Bによる電場: $k\dfrac{1.0\times10^{-8}}{(0.10)^2} = k \times \dfrac{1.0\times10^{-8}}{0.01} = k \times 1.0\times10^{-6}$
両者は等しくなっており、確かに条件を満たしています。
答え: Aから $0.20\,\text{m}$ の位置
練習問題
問題 真空中に電気量 $Q = 5.0 \times 10^{-8}\,\text{C}$ の点電荷がある。この点電荷から $r = 0.50\,\text{m}$ 離れた点における、(1) 電場の強さ、(2) 電位を求めよ。
答え
(1) $E = k\dfrac{Q}{r^2} = 9.0\times10^9 \times \dfrac{5.0\times10^{-8}}{(0.50)^2} = \dfrac{450}{0.25} = 1.8\times10^3\,\text{N/C}$
(2) $V = k\dfrac{Q}{r} = 9.0\times10^9 \times \dfrac{5.0\times10^{-8}}{0.50} = \dfrac{450}{0.50} = 9.0\times10^2\,\text{V}$