物理 / 原子

原子核の構成と結合エネルギー

要点整理

原子の中心にある原子核は、陽子中性子という2種類の粒子からできています。陽子は正の電気を持ち、中性子は電気を持ちません。陽子と中性子は、電子に比べるとずっと重く、ほぼ同じ質量を持っているため、まとめて核子と呼ばれることがあります。

原子核に含まれる陽子の数を原子番号と呼び、記号 $Z$ で表します。原子番号は、その原子が何という元素であるかを決めます。陽子の数と中性子の数を合計したものを質量数と呼び、記号 $A$ で表します。中性子の数を $N$ とすると、

$A = Z + N$

という関係が成り立ちます。原子番号(陽子の数)が同じでも、中性子の数が異なる原子どうしを同位体と呼びます。例えば、ふつうの水素($^1\mathrm{H}$、陽子1個)と重水素($^2\mathrm{H}$、陽子1個・中性子1個)は、どちらも水素の同位体です。

質量とエネルギーは同じもの

アインシュタインは、特殊相対性理論の中で、質量とエネルギーが実は同じものの2つの現れ方であることを示しました。質量 $m$ とエネルギー $E$ の間には、

$E = mc^2$

という関係が成り立ちます。$c$ は光の速さ($c=3.0\times10^8\ \mathrm{m/s}$)です。この式は、質量を持つものはすべてエネルギーに変換できる(そして、その逆もできる)ことを意味しています。日常生活でこの変換に気づくことはほとんどありませんが、$c^2$ がとても大きな値であるため、ごくわずかな質量の変化でも、莫大なエネルギーに対応します。原子核反応では、この関係が重要な役割を果たします。

質量欠損と結合エネルギー

原子核をつくっている陽子や中性子を、実際にばらばらに引き離してその質量を測ると、不思議なことに、ばらばらにした後の陽子・中性子の質量の合計は、もとの原子核の質量よりも大きくなります。言い換えると、陽子や中性子が集まって原子核になるときに、質量の一部が失われているのです。この失われた質量を質量欠損と呼び、記号 $\Delta m$ で表します。

$\Delta m = (\text{陽子の質量の和} + \text{中性子の質量の和}) - (\text{原子核の質量})$

この失われた質量 $\Delta m$ は、消えてなくなったわけではありません。$E=mc^2$ の関係にしたがって、原子核ができるときにエネルギーとして放出されたのです。逆に言えば、原子核をばらばらの陽子・中性子に分解するには、そのエネルギーと同じだけのエネルギーを外から与える必要があります。このエネルギーを結合エネルギーと呼び、

$E = \Delta m\, c^2$

という式で求められます。結合エネルギーが大きい原子核ほど、陽子・中性子が強く結びついていて、ばらばらにしにくい、つまり安定な原子核であるということになります。

質量を扱うときは、キログラムではなく、原子質量単位 $\mathrm{u}$(ユー)という単位がよく使われます。$1\ \mathrm{u} = 1.66\times10^{-27}\ \mathrm{kg}$ です。陽子の質量は $m_p = 1.0073\ \mathrm{u}$、中性子の質量は $m_n = 1.0087\ \mathrm{u}$ です。また、原子核反応で扱うエネルギーは非常に小さいので、ジュールの代わりに $\mathrm{MeV}$(メガ電子ボルト、$1\ \mathrm{MeV}=1.6\times10^{-13}\ \mathrm{J}$)という単位がよく使われます。

例題

例題1(基本)

問題

ヘリウム4の原子核(陽子2個・中性子2個からなる)の質量は $4.0015\ \mathrm{u}$ である。この原子核の質量欠損を求めよ。陽子の質量を $m_p=1.0073\ \mathrm{u}$、中性子の質量を $m_n=1.0087\ \mathrm{u}$ とする。

解答・解説を見る

陽子2個・中性子2個をばらばらに集めたときの質量の合計は、

$2m_p + 2m_n = 2\times1.0073 + 2\times1.0087 = 2.0146 + 2.0174 = 4.0320\ \mathrm{u}$

質量欠損は、この合計から実際の原子核の質量を引いたものなので、

$\Delta m = 4.0320 - 4.0015 = 0.0305\ \mathrm{u}$

答え:質量欠損は $0.0305\ \mathrm{u}$

例題2(標準)

問題

例題1のヘリウム4の原子核について、結合エネルギーをジュールと $\mathrm{MeV}$ で求めよ。また、核子1個あたりの結合エネルギー(結合エネルギーを質量数で割った値)を求めよ。$1\ \mathrm{u}=1.66\times10^{-27}\ \mathrm{kg}$、$c=3.0\times10^8\ \mathrm{m/s}$、$1\ \mathrm{MeV}=1.6\times10^{-13}\ \mathrm{J}$ とする。

解答・解説を見る

まず、質量欠損 $\Delta m = 0.0305\ \mathrm{u}$ をキログラムに直します。

$\Delta m = 0.0305\times 1.66\times10^{-27} \approx 5.06\times10^{-29}\ \mathrm{kg}$

結合エネルギーは $E=\Delta m\, c^2$ より、

$E = 5.06\times10^{-29}\times (3.0\times10^{8})^2 = 5.06\times10^{-29}\times 9.0\times10^{16}$

$5.06\times9.0 \approx 45.5$ なので、

$E \approx 45.5\times10^{-13} = 4.55\times10^{-12}\ \mathrm{J}$

$\mathrm{MeV}$ に直すと、

$E = \frac{4.55\times10^{-12}}{1.6\times10^{-13}} \approx 28.5\ \mathrm{MeV}$

ヘリウム4の質量数は $A=4$ なので、核子1個あたりの結合エネルギーは、

$\frac{E}{A} = \frac{28.5}{4} \approx 7.1\ \mathrm{MeV}$

答え:結合エネルギーは約 $4.55\times10^{-12}\ \mathrm{J}$(約 $28.5\ \mathrm{MeV}$)、核子1個あたりでは約 $7.1\ \mathrm{MeV}$

核子1個あたりの結合エネルギーは、原子核がどれだけ安定かを比べるときの目安になります。この値が大きい原子核ほど、核子どうしが強く結びついている安定な原子核であるといえます。

例題3(応用)

問題

重水素の原子核(陽子1個・中性子1個からなる、記号 $^2\mathrm{H}$)の質量は $2.0136\ \mathrm{u}$ である。結合エネルギーを $\mathrm{MeV}$ で求めよ。$m_p=1.0073\ \mathrm{u}$、$m_n=1.0087\ \mathrm{u}$、$1\ \mathrm{u}=1.66\times10^{-27}\ \mathrm{kg}$、$c=3.0\times10^8\ \mathrm{m/s}$、$1\ \mathrm{MeV}=1.6\times10^{-13}\ \mathrm{J}$ とする。

解答・解説を見る

陽子1個と中性子1個をばらばらに集めたときの質量の合計は、

$m_p + m_n = 1.0073 + 1.0087 = 2.0160\ \mathrm{u}$

質量欠損は、

$\Delta m = 2.0160 - 2.0136 = 0.0024\ \mathrm{u}$

キログラムに直すと、

$\Delta m = 0.0024\times 1.66\times10^{-27} \approx 3.98\times10^{-30}\ \mathrm{kg}$

結合エネルギーは、

$E = \Delta m\, c^2 = 3.98\times10^{-30}\times 9.0\times10^{16} \approx 3.58\times10^{-13}\ \mathrm{J}$

$\mathrm{MeV}$ に直すと、

$E = \frac{3.58\times10^{-13}}{1.6\times10^{-13}} \approx 2.2\ \mathrm{MeV}$

答え:結合エネルギーは約 $2.2\ \mathrm{MeV}$

例題2のヘリウム4(核子1個あたり約 $7.1\ \mathrm{MeV}$)と比べると、重水素は核子1個あたりの結合エネルギーがずっと小さく($1.1\ \mathrm{MeV}$ 程度)、ヘリウム4の方がより安定な原子核であることがわかります。

練習問題

問題

ヘリウム3の原子核(陽子2個・中性子1個からなる)の質量は $3.0149\ \mathrm{u}$ である。質量欠損と結合エネルギー($\mathrm{MeV}$ 単位)を求めよ。$m_p=1.0073\ \mathrm{u}$、$m_n=1.0087\ \mathrm{u}$、$1\ \mathrm{u}=1.66\times10^{-27}\ \mathrm{kg}$、$c=3.0\times10^8\ \mathrm{m/s}$、$1\ \mathrm{MeV}=1.6\times10^{-13}\ \mathrm{J}$ とする。

答え

$2m_p+m_n = 2\times1.0073+1.0087=3.0233\ \mathrm{u}$

$\Delta m = 3.0233-3.0149=0.0084\ \mathrm{u}$

$\Delta m$(kg)$=0.0084\times1.66\times10^{-27}\approx1.39\times10^{-29}\ \mathrm{kg}$

$E=\Delta m\, c^2 \approx 1.39\times10^{-29}\times9.0\times10^{16}\approx1.25\times10^{-12}\ \mathrm{J} \approx 7.8\ \mathrm{MeV}$