物理基礎 / 波
横波と縦波
要点整理
波とは何か
池に石を投げ入れると、石が落ちた場所から水面の盛り上がりが輪になって広がっていきます。このとき、水そのものが遠くまで流れて行っているわけではありません。水面に浮かんだ木の葉を見ていると、木の葉はその場で上下に揺れるだけで、波の輪と一緒に遠くまで運ばれていくことはありません。
このように、波とは、ある場所の振動(揺れ)が、次々と隣の場所に伝わっていく現象のことです。振動を伝える物質のことを媒質と呼びます。水面波であれば水が媒質ですし、音であれば空気が媒質です。大事なポイントは、「媒質そのものが移動していくのではなく、媒質の"揺れ方"という情報だけが伝わっていく」という点です。
横波:振動方向と進行方向が垂直
ロープの端を持って、上下にひょいと1回振ってみます。すると、山型の盛り上がりがロープを伝ってもう一方の端へと進んでいきます。このとき、ロープの各点(媒質)は上下方向に振動していますが、波そのものは横方向(ロープに沿った方向)に進んでいきます。
このように、**媒質の振動方向が、波の進む向き(進行方向)に対して垂直になっている波を「横波」**といいます。ロープの波のほか、光(電磁波)も横波の仲間です。
縦波:振動方向と進行方向が平行
次に、ばね(スリンキーのような柔らかいばね)を用意し、一方の端を軽く押し込んでからすぐに戻す、という操作をしてみます。すると、ばねの巻き線が密集している部分(押し縮められた部分)が、ばねに沿ってもう一方の端まで伝わっていきます。
このとき、ばねの各点は押した方向、つまりばねが伸びている向きと同じ方向(前後方向)に振動しています。波が進む向きも、ばねが伸びている方向です。つまり、振動方向と進行方向が同じ(平行)になっています。
このように、媒質の振動方向が、波の進む向きに対して平行になっている波を「縦波」といいます。縦波では、媒質の粒子が集まって混み合っている部分と、粒子がまばらになっている部分が交互に生まれるため、「疎密波」とも呼ばれます。粒子が集まっている部分を密、粒子がまばらな部分を疎といいます。音波は縦波(疎密波)の代表例です。
縦波を「横波のように」描く方法
縦波は、媒質が波の進行方向(たとえば右向き)に沿って前後に振動するため、そのままの向きでグラフに描こうとすると、変位(基準の位置からのずれ)を表す矢印と、位置を表す軸が同じ向きになってしまい、非常に読みにくい図になります。
そこで物理では、次のような約束をして縦波を描きます。
- 横軸には、媒質のもとの位置 $x$ をとる。
- 縦軸には、その媒質が本来の位置からどれだけ、どちら向きにずれているか(変位)を、進行方向を正と決めて、あたかも横波のグラフのように描く。
つまり、実際には前後(左右)にしか動いていない媒質の変位を、「進行方向にずれていればグラフ上で上向き」「進行方向と逆にずれていればグラフ上で下向き」というルールで縦向きの高さに変換して描くのです。こうすると、縦波も横波と同じような山・谷のあるグラフで表すことができ、波長や振幅を読み取りやすくなります。
この「横波のように描いた縦波のグラフ」から、密・疎の位置を読み取ることもできます。
- グラフを $x$ の正の向き(右向き)にたどっていったとき、変位が 正から負へ0を横切る点(山から谷へ下りていく途中で0になる点)の付近では、その前後の媒質が互いに近づき合っている状態になっており、粒子が集まっているので密になります。
- 逆に、変位が 負から正へ0を横切る点(谷から山へ上っていく途中で0になる点)の付近では、媒質が互いに遠ざかっている状態になっており、疎になります。
この判定方法は、後の練習問題や章末問題でも使うので、覚えておきましょう。
横波が伝わる様子をシミュレーションで確認する
下のシミュレーションでは、横波が右向きに伝わっていく様子を表しています。波形の曲線(全体の形)は右へ進んでいきますが、曲線上の丸い点(媒質の1点)に注目すると、その場で上下に振動しているだけであることが分かります。波の速さ $v$ や波長 $\lambda$ をスライダーで変えて、波形の進み方の違いを観察してみましょう。
例題
例題1(基本)
問題 次の(a)〜(d)の波を、横波と縦波に分類しなさい。 (a) ギターの弦をはじいたときに弦を伝わる波 (b) 音が空気中を伝わる波 (c) 太陽から地球に届く光 (d) スリンキー(ばね)を押し縮めて放したときに伝わる波
解答・解説を見る
まず、横波と縦波の区別のしかたを思い出しましょう。媒質の振動方向と波の進行方向を比べて、垂直なら横波、平行なら縦波でした。
(a) 弦は、はじいた向き(弦に垂直な向き、たとえば上下)に振動しますが、波は弦に沿った方向(左右)に進みます。振動方向と進行方向が垂直なので、横波です。
(b) 音は、空気の分子が音の進む向きと同じ方向に押されたり戻されたりすることで伝わります。振動方向と進行方向が平行なので、縦波です。
(c) 光は電磁波と呼ばれる波で、電場・磁場の振動方向は光が進む向きに対して垂直です。したがって横波です。
(d) スリンキーを押し縮めると、ばねの巻き線はばねが伸びている方向(波が進む方向と同じ)に押し縮められたり戻ったりします。振動方向と進行方向が平行なので、縦波です。
例題2(標準)
問題 右向きに進む横波があり、ある瞬間の波形が下の図のような正弦曲線になっているとします(山が $x=1\,\text{m}$、谷が $x=3\,\text{m}$、その間の $x=2\,\text{m}$ で変位が0で、$x$ が増えるほど変位が減っている状態)。このとき、$x=2\,\text{m}$ にある媒質の点は、今この瞬間、上向きと下向きのどちらに動いているか答えなさい。
解答・解説を見る
横波のグラフから、ある点が今どちら向きに動いているかを求めるときは、次のように考えます。
波はごくわずかな時間が経つと、進行方向にほんの少しだけ形を保ったまま移動します。 つまり、「今の波形を、進行方向にほんの少しだけずらしたもの」が、ほんの少し後の波形になります。
この波は右向き(+$x$向き)に進んでいるので、波形全体をほんの少しだけ右にずらしてみましょう。今、$x=2\,\text{m}$ の少し左側($x$ が2よりわずかに小さいところ)は、山(正の変位)に近い場所なので、まだ変位がプラスの値になっています。波形を右にずらすと、この「少し左側にあった正の変位」が $x=2\,\text{m}$ の位置にやってくることになります。
つまり、$x=2\,\text{m}$ の点の変位は、今の0から、ほんの少し後には正の値に変わる、ということです。変位が0から正の方向へ変化するということは、この点は上向きに動いていることになります。
(別の考え方:このグラフは $x$ が増えるほど変位が減っている、つまり右下がりの傾きになっています。右向きに進む波では、「グラフの傾きが右下がりの点は上向きに動く」「右上がりの点は下向きに動く」という関係になることを、上のように波形を少しずらして確認できます。)
例題3(応用)
問題 右向きに進む縦波を、進行方向を正として横波のように描いたグラフでは、$x=5\,\text{m}$ の点で変位が正から負へ0を横切っており、$x=9\,\text{m}$ の点で変位が負から正へ0を横切っています。$x=5\,\text{m}$ と $x=9\,\text{m}$ は、それぞれ密・疎のどちらの位置か答えなさい。
解答・解説を見る
要点整理で確認したルールを使います。
- $x$ の正の向き(右向き)にグラフをたどったとき、変位が正から負へ0を横切る点 → 密
- $x$ の正の向き(右向き)にグラフをたどったとき、変位が負から正へ0を横切る点 → 疎
$x=5\,\text{m}$ では、変位が正から負に変わっているので、この点は密です。これは、$x=5\,\text{m}$ よりわずかに左側の媒質は進行方向(右向き)にずれていて(正の変位)、わずかに右側の媒質は進行方向と逆(左向き)にずれている(負の変位)ため、両側から媒質が $x=5\,\text{m}$ に向かって集まってきている状態になっているからです。
$x=9\,\text{m}$ では、変位が負から正に変わっているので、この点は疎です。$x=9\,\text{m}$ よりわずかに左側の媒質は左向きにずれていて、わずかに右側の媒質は右向きにずれているため、両側から媒質が $x=9\,\text{m}$ から遠ざかっていく状態になっており、粒子がまばらになるからです。
練習問題
問題 地震のP波は縦波、S波は横波であることが知られています。P波はS波よりも伝わる速さが速いため、地震が起きると先にP波が届き、少し遅れてS波が届きます(この時間差を利用して緊急地震速報が発表されます)。P波が伝わるとき、地面(媒質)はどの方向に振動していますか。「P波の進む向きに対して」という言葉を使って説明しなさい。
答え
P波は縦波なので、地面はP波が進む向きに対して平行な方向に振動します(押し縮められたり、伸ばされたりする向きに振動します)。