物理 / 原子

よくある間違い

間違い1: 光を強くすれば光電子が飛び出すと思ってしまう

よくある誤答例

光電効果が起こらない振動数の光でも、光を強くしたり、長時間当て続けたりすれば、いつか光電子が飛び出すはずだと考えてしまう。

なぜ間違いなのか

光電効果の式 $K_{max}=h\nu-W$ を見ればわかるように、光電子が飛び出すかどうかを決めているのは振動数 $\nu$ だけです。光を強くするというのは、光子の数が増えるということであって、光子1個が持つエネルギー $h\nu$ が変わるわけではありません。$h\nu

正しい考え方

光電子が飛び出すかどうかは、振動数(または波長)だけで決まります。振動数が限界振動数 $\nu_0=\dfrac{W}{h}$ 以上かどうかを、まず確認しましょう。

間違い2: 振動数を上げると光電子の数が増えると思ってしまう

よくある誤答例

当てる光の振動数を大きくすれば、飛び出す光電子の数が増えると考えてしまう。

なぜ間違いなのか

振動数を変えると変わるのは、光電子1個あたりの最大運動エネルギー $K_{max}=h\nu-W$ です。飛び出す光電子のは、金属に当たる光子の、つまり光の強さで決まります。振動数を変えても、光の強さ(単位時間あたりに当たる光子の数)が同じなら、飛び出す光電子の数は変わりません。

正しい考え方

「振動数」は光電子1個あたりの運動エネルギーを決め、「光の強さ(光子の数)」は飛び出す光電子の数を決める、という役割分担をはっきり区別しましょう。

間違い3: ド・ブロイ波長の公式で $h$ と $p$ の位置を逆にしてしまう

よくある誤答例

$\lambda=h/p$ を $\lambda=p/h$ としてしまったり、運動量 $p$ を求めるときに $p=v$(質量をかけ忘れる)としてしまう。

なぜ間違いなのか

ド・ブロイ波長の式は $\lambda=\dfrac{h}{p}$ であり、$h$(プランク定数、$6.6\times10^{-34}$ 程度のとても小さい値)を運動量 $p$ で割る形です。運動量は必ず $p=mv$(質量×速度)であり、速度だけを運動量として扱うと、次元(単位)が合わなくなります。

正しい考え方

まず運動量 $p=mv$(または運動エネルギーが与えられていれば $p=\sqrt{2mK}$)を先に求め、その後で $\lambda=\dfrac{h}{p}$ に代入するという2段階の手順を、いつも同じ順序で踏むようにしましょう。

間違い4: エネルギー準位の $n=1$ が最もエネルギーが高いと思ってしまう

よくある誤答例

原子番号や量子数 $n$ が大きいほど「上位」でエネルギーが低い、あるいは逆に $n=1$ が最もエネルギーが高く不安定な状態だと勘違いしてしまう。

なぜ間違いなのか

水素原子のエネルギー準位は $E_n=\dfrac{E_1}{n^2}$、$E_1=-13.6\ \mathrm{eV}$ という、マイナスの値です。$n$ が大きくなるほど $n^2$ で割る値が大きくなるので、$E_n$ の絶対値は小さくなり、$0$ に近づいていきます。つまり $n$ が大きいほどエネルギーは高く(0に近く)、$n=1$ のときにエネルギーが最も低く(絶対値が最も大きく)なります。エネルギーが最も低い状態が、最も安定な状態です。

正しい考え方

マイナスの符号を含めて大小を比較しましょう。例えば $E_1=-13.6\ \mathrm{eV}$ と $E_2=-3.4\ \mathrm{eV}$ を比べると、$-3.4 > -13.6$ なので、$E_2$ の方がエネルギーが高い(基底状態の $E_1$ より不安定な励起状態である)ということになります。

間違い5: 準位間のエネルギー差を求めるときに、光の吸収と放出を逆にしてしまう

よくある誤答例

電子が高い準位から低い準位に落ちるときに光を吸収すると考えてしまう、あるいはその逆に、低い準位から高い準位に上がるときに光を放出すると考えてしまう。

なぜ間違いなのか

電子がエネルギーの高い状態からエネルギーの低い状態に移るときは、その分のエネルギーが余るので、そのエネルギーを光子として外に出します(放出)。逆に、電子がエネルギーの低い状態から高い状態に移るには、外部から足りない分のエネルギーを補う必要があるので、光を吸収します。

正しい考え方

「エネルギーが下がる → 放出」「エネルギーが上がる → 吸収」という対応を、エネルギー準位図を頭の中に描きながら確認しましょう。

間違い6: 質量数 $A$ と原子番号 $Z$ の意味を混同してしまう

よくある誤答例

質量数を「陽子の数」、原子番号を「陽子と中性子の数の合計」だと逆に覚えてしまう。

なぜ間違いなのか

原子番号 $Z$ は陽子の数のことで、これが元素の種類を決めます(周期表の番号と同じです)。質量数 $A$ は陽子の数と中性子の数を合計したもの($A=Z+N$)です。この2つを取り違えると、核反応式の保存則を確認するときに、必ずどちらかの計算を間違えてしまいます。

正しい考え方

原子核の表記 $^{A}_{Z}\mathrm{X}$ では、左上が質量数 $A$、左下が原子番号 $Z$ です。「上が全部の数(質量数)、下が陽子だけの数(原子番号)」という位置で覚えておくと混同しにくくなります。

間違い7: 半減期の2倍の時間がたつと、物質が「すべてなくなる」と思ってしまう

よくある誤答例

半減期が $T$ の物質は、時間 $2T$ がたつとゼロになる(すべて崩壊してしまう)と考えてしまう。

なぜ間違いなのか

半減期の式 $N=N_0\left(\dfrac{1}{2}\right)^{t/T}$ は、$t=2T$ を代入すると $N=N_0\times\dfrac{1}{4}$ となり、ゼロにはなりません。この式は、時間がたつごとに「半分」「そのまた半分」「そのまた半分」と減っていく式であり、$t$ をどれだけ大きくしても、理論上は $0$ にはなりません(限りなく $0$ に近づくだけです)。

正しい考え方

半減期は「量が半分になるまでの時間」であって、「なくなるまでの時間」ではありません。$n$ 回半減期が経過すると、残っている量は $\left(\dfrac{1}{2}\right)^n$ 倍になる、という掛け算のイメージで捉えましょう。

間違い8: 核反応式を、質量数・原子番号の保存を確認せずに作ってしまう

よくある誤答例

核反応式の中の未知の原子核を、周期表の記憶だけで(保存則を確認せずに)なんとなく決めてしまう。

なぜ間違いなのか

核反応式に出てくる未知の原子核の質量数・原子番号は、反応の前後で質量数の合計・原子番号の合計がそれぞれ等しくなるという条件から、機械的に決まります。この確認を飛ばしてしまうと、実際には存在しない組み合わせを答えにしてしまうことがあります。

正しい考え方

未知の原子核が出てきたら、必ず「質量数の合計が等しい」「原子番号の合計が等しい」という2つの式を立てて、未知数を求めてから、その原子番号に対応する元素を周期表で確認するという手順を踏みましょう。