物理 / 電気と磁気
非オーム抵抗と半導体の初歩
要点整理
オームの法則が成り立たない素子
物理基礎で学んだオームの法則 $V=IR$ は、金属の抵抗線などでは電流 $I$ と電圧 $V$ が比例するという経験則でした。この場合、電流-電圧のグラフ(横軸に電圧、縦軸に電流をとったグラフ)は、原点を通る直線になります。このグラフの傾きの逆数が抵抗 $R$ に対応します。
しかし、すべての電気部品がこのような比例関係を示すわけではありません。電流と電圧が比例しない素子のことを非オーム抵抗と呼びます。代表的な例が、電球のフィラメント(発光する金属線)です。
電球のフィラメントに電流を流すと、フィラメントは高温になって光を発します。ところが金属は温度が上がるほど抵抗が大きくなる性質があります。電圧を大きくすると、電流も大きくなりますが、それにともなってフィラメントの温度が上がり、抵抗も大きくなっていきます。そのため、電圧を大きくしていくと、電流の増え方はだんだんゆるやかになります。これをグラフにすると、原点を通るものの、直線ではなく、電圧が大きくなるほど傾きが小さくなっていく曲線になります。
このような非オーム抵抗の場合でも、グラフ上のある1点(ある動作点)における電流 $I$ と電圧 $V$ から、その瞬間の抵抗を
$R = \dfrac{V}{I}$
として求めることはできます。ただし、この $R$ の値は動作点によって変わる値であり、一定の値をもつ定数ではないことに注意してください。
非オーム抵抗を含む回路の解き方(グラフを使う方法)
非オーム抵抗の電流-電圧の関係が式ではなくグラフ(実験データ)で与えられている場合、回路の動作点を求めるには次のような方法を使います。
- 非オーム抵抗の電流-電圧のグラフ(特性曲線)を用意する。
- 回路の他の部分(電池と、直列につながれた抵抗など)について、キルヒホッフの法則から電圧と電流の関係式を1本立てる。これは電流 $I$ と電圧 $V$ について直線の式になるので、負荷線と呼ばれます。
- 特性曲線のグラフの上に、負荷線を重ねて描く。
- 2つの線が交わる点が、実際にその回路で実現する動作点(電流と電圧の組)である。
なぜこの方法が正しいのかを考えてみましょう。非オーム抵抗の特性曲線は、「その素子に電圧 $V$ をかけたときに流れる電流 $I$」の関係を表しています。一方、負荷線は「回路の残りの部分から決まる、電流 $I$ と電圧 $V$ が満たすべき関係」を表しています。回路が実際に落ち着く動作点は、この2つの条件を同時に満たす点、つまり2つのグラフの交点でなければなりません。
半導体の基本的な性質
ケイ素(Si)やゲルマニウム(Ge)のような物質は、電気を通しやすい金属(導体)と、電気をほとんど通さないゴムやガラスのような物質(絶縁体)の中間の性質をもっています。これらを半導体と呼びます。
純粋な半導体(真性半導体)は、常温では自由に動ける電子が非常に少なく、電気を通しにくい状態です。しかし、ここにごくわずかな不純物を加える(これを「ドーピング」と呼びます)ことで、電気の通しやすさを大きく変化させることができます。
- n型半導体: ケイ素(価電子4個)に、価電子を5個もつ不純物(リンなど)をわずかに混ぜたもの。不純物原子の価電子のうち1個が余り、この余った電子が自由に動いて電流を運びます。電流を運ぶ担い手が(負の電荷をもつ)電子なので、negativeの頭文字をとってn型と呼ばれます。
- p型半導体: ケイ素に、価電子を3個もつ不純物(ホウ素など)をわずかに混ぜたもの。電子が1個足りない場所ができ、これを**正孔(ホール)**と呼びます。正孔はまるで正の電荷をもった粒子のようにふるまい、電流を運ぶ担い手になります。positiveの頭文字をとってp型と呼ばれます。
ダイオードと整流作用
p型半導体とn型半導体を接合してつくった素子をダイオードと呼びます。ダイオードには、電流を一方向にしか流さないという特徴的な性質があり、これを整流作用と呼びます。
- 順方向(p型側を電池の+極に、n型側を-極につなぐ向き)に電圧をかけると、ある電圧(しきい値、シリコンダイオードではおよそ $0.6\text{-}0.7\,\text{V}$)を超えたところから急激に電流が流れ始めます。
- 逆方向につないだ場合には、ほとんど電流は流れません。
ダイオードの電流-電圧のグラフは、原点を通る直線とは大きく異なる、非常に特徴的な曲線になります。このような素子を含む回路も、前で説明した負荷線の方法で動作点を求めることができます。多くの問題では、ダイオードを「しきい値電圧 $V_f$ 以下では電流が流れず、$V_f$ を超えると抵抗なしで(電圧が $V_f$ のまま)電流が流れる」という単純なモデルで近似して扱います。
例題
例題1(基本)
問題 ある電球のフィラメントに $V=2.0\,\text{V}$ の電圧をかけたところ、$I=0.4\,\text{A}$ の電流が流れた。この動作点における抵抗を求めよ。また、電圧を大きくしていくとフィラメントの温度は上がるが、このとき抵抗は大きくなるか、小さくなるか、理由とともに答えよ。
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抵抗を求める
この動作点での抵抗は、$R=V/I$ の式に数値を代入して求めます。
$R = \dfrac{2.0}{0.4} = 5.0\,\Omega$
温度と抵抗の関係
金属は、温度が上がると原子の熱振動が激しくなり、自由電子が原子にぶつかりやすくなるため、電流が流れにくくなります。つまり、温度が上がるほど抵抗は大きくなります。フィラメントは電流が流れることで発熱して温度が上がるため、電圧を大きくしていくと抵抗はだんだん大きくなっていきます。
答え: $R = 5.0\,\Omega$、抵抗は大きくなる
例題2(標準)
問題 ある電球の電流-電圧特性が、$I = 0.1V^2$(ただし $I$ の単位はA、$V$ の単位はV)という式で近似できるとする。この電球を、起電力 $E=6.0\,\text{V}$(内部抵抗は無視できる)の電池と、抵抗 $R=10\,\Omega$ に直列につないだ。回路に流れる電流 $I$ と、電球にかかる電圧 $V$ を求めよ。
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負荷線の式を立てる
回路は電池、抵抗 $R$、電球が直列につながっているので、キルヒホッフの第二法則(電圧則)より、
$E = IR + V$
ここで $V$ は電球にかかる電圧です。数値を代入すると、
$6.0 = 10I + V \quad \cdots ①$
電球の特性式と連立させる
電球の特性式は $I = 0.1V^2$ です。これを①式の $I$ に代入します。
$6.0 = 10 \times (0.1V^2) + V$
$10 \times 0.1 = 1$ なので、
$6.0 = V^2 + V$
移項して整理すると、
$V^2 + V - 6.0 = 0$
2次方程式を解く
この式は因数分解できます。かけて $-6.0$、足して $1$ になる2つの数を探すと、$3$ と $-2$ です。
$(V+3)(V-2) = 0$
したがって $V=-3$ または $V=2$ となりますが、電圧は負の値にならないので、
$V = 2.0\,\text{V}$
電流を求める
$I=0.1V^2$ に $V=2.0$ を代入します。
$I = 0.1 \times (2.0)^2 = 0.1 \times 4.0 = 0.4\,\text{A}$
検算
①式に代入すると、$10\times0.4+2.0=4.0+2.0=6.0=E$ となり、一致します。
答え: $I = 0.4\,\text{A}$, $V = 2.0\,\text{V}$
例題3(応用)
問題 起電力 $E=3.0\,\text{V}$(内部抵抗は無視できる)の電池に、抵抗 $R=120\,\Omega$ とダイオードを直列につないだ。このダイオードは、しきい値電圧 $V_f=0.6\,\text{V}$ 未満では電流を流さず、順方向に電流が流れているときは常に両端の電圧が $0.6\,\text{V}$ に保たれるものとする。回路に流れる電流 $I$ を求めよ。
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ダイオードに電流が流れているとすると、ダイオードの両端の電圧は $V_f=0.6\,\text{V}$ で一定です。回路全体でキルヒホッフの第二法則を立てると、
$E = IR + V_f$
数値を代入します。
$3.0 = 120I + 0.6$
$0.6$ を移項します。
$3.0 - 0.6 = 120I$
$2.4 = 120I$
$I = \dfrac{2.4}{120} = 0.02\,\text{A}$
これは正の値なので、「ダイオードに電流が流れている」という最初の仮定と矛盾しません。
答え: $I = 0.02\,\text{A} = 20\,\text{mA}$
練習問題
問題 起電力 $E=4.7\,\text{V}$(内部抵抗は無視できる)の電池に、抵抗 $R=200\,\Omega$ とダイオード(しきい値電圧 $V_f=0.7\,\text{V}$、例題3と同じモデル)を直列につないだ。回路に流れる電流 $I$ を求めよ。
答え
$E=IR+V_f$ より $4.7=200I+0.7$
$I = \dfrac{4.0}{200} = 0.020\,\text{A} = 20\,\text{mA}$