物理基礎 / 運動とエネルギー

力のつり合い

要点整理

力はベクトル量

物を押したり引いたり持ち上げたりするとき、そこには必ず「力」がはたらいています。力を正しく扱うために、まず大切な性質を確認しておきましょう。力は、大きさだけでなく向きも持つ量、つまりベクトル量です。

力を図に表すときは、矢印を使います。矢印の始点が力のはたらく点(作用点)、矢印の向きが力の向き、矢印の長さが力の大きさを表します。力の大きさの単位はニュートン($\mathrm{N}$)です。

身の回りの力には、次のようなものがあります。

  • 重力:地球が物体を鉛直下向きに引く力。大きさは $mg$($m$:質量、$g$:重力加速度)です。
  • 垂直抗力:物体が机や床などの面に接しているとき、面から垂直に押し返される力。
  • 張力:糸やひもが物体を引く力。

(弾性力や摩擦力については、この後のページで詳しく学びます。)

力のつり合いとは

物体にいくつかの力がはたらいていても、物体が静止したまま動かない、あるいは一定の速度で動き続けている場合があります。このとき、物体にはたらいている力は「つり合っている」といいます。

力のつり合いの条件を式で表すと、物体にはたらくすべての力 $\vec{F_1}, \vec{F_2}, \ldots$ をベクトルとして足し合わせた合力が $0$ になる、ということです。

$\vec{F_1}+\vec{F_2}+\cdots=0$

これは「大きさの合計が0」という意味ではなく、「向きも考えてベクトルとして足し算した結果が0」という意味であることに注意してください。

2力のつり合い

物体にはたらく力が2つだけの場合、つり合いの条件はとてもシンプルになります。2つの力 $\vec{F_1}$、$\vec{F_2}$ が $\vec{F_1}+\vec{F_2}=0$ を満たすということは、$\vec{F_2}=-\vec{F_1}$ ということです。つまり、

  • 大きさが等しい
  • 向きが反対
  • 同一直線上にある

という3条件をすべて満たす必要があります。たとえば、机の上に置かれた物体には、下向きの重力 $mg$ と、上向きの垂直抗力 $N$ がはたらいており、物体が静止しているならば $N=mg$ が成り立ちます。

3つ以上の力のつり合い(成分で考える)

力が3つ以上になると、図形的な関係だけでは扱いにくくなります。そこで、それぞれの力を水平方向(x方向)と鉛直方向(y方向)の成分に分けて、方向ごとに別々につり合いの式を立てるという方法を使います。

$\sum F_x = 0, \qquad \sum F_y = 0$

つまり、「横方向の力を全部足すと0」「縦方向の力を全部足すと0」という2つの式が同時に成り立つ、と考えるのです。すでに水平・鉛直の向きに分かれている力どうしであれば、この方法は難しい計算なしにそのまま使えます(斜めの力を成分に分解する方法は、次のページで詳しく学びます)。

下のシミュレーションでは、3方向に引っ張る力の大きさをそれぞれ変えることができます。3つの力の合力(赤い矢印)の大きさと向きがどう変わるか、また合力がほぼ0になる(=つり合う)のはどんなときかを確かめてみましょう。

例題

例題1(基本)

問題

重さ $20\ \mathrm{N}$ の物体が、水平な机の上に静止して置かれている。この物体にはたらく垂直抗力の大きさを求めよ。

解答・解説を見る

物体にはたらいている力は、下向きの重力 $20\ \mathrm{N}$ と、上向きの垂直抗力 $N$ の2つだけです。物体は静止しているので、この2力はつり合っています。2力のつり合いでは、大きさが等しく向きが反対になるので、

$N = 20\ \mathrm{N}$

答え:垂直抗力の大きさは $20\ \mathrm{N}$

例題2(標準)

問題

重さ $18\ \mathrm{N}$ の物体が水平な机の上に置かれており、さらに真上から $4\ \mathrm{N}$ の力で押さえつけられている。この物体にはたらく垂直抗力の大きさを求めよ。

解答・解説を見る

物体には、下向きの力として「重力 $18\ \mathrm{N}$」と「押さえつける力 $4\ \mathrm{N}$」の2つがあり、上向きの力として「垂直抗力 $N$」があります。物体は静止しているので、鉛直方向の力のつり合いより、

$N = 18 + 4$

$N = 22\ \mathrm{N}$

答え:垂直抗力の大きさは $22\ \mathrm{N}$

このように、下向きの力が複数あるときは、それらをすべて足し合わせた値と、上向きの力がつり合うと考えます。

例題3(応用)

問題

1つのリングに3本の糸がついていて、リングは静止している。糸Aは水平方向に $8\ \mathrm{N}$ の力でリングを引いており、糸Bは鉛直下向きに $6\ \mathrm{N}$ の力でリングを引いている。3本目の糸Cの張力の大きさと、水平方向とのなす角度を求めよ。

解答・解説を見る

リングは静止しているので、3本の糸の張力はつり合っています。糸Cの張力を、水平成分 $C_x$ と鉛直成分 $C_y$ に分けて考えます。

水平方向のつり合い

糸Aが水平方向に $8\ \mathrm{N}$ で引いているので、糸Cの水平成分はこれと反対向きに同じ大きさでなければなりません。

$C_x = 8\ \mathrm{N}$

鉛直方向のつり合い

糸Bが鉛直下向きに $6\ \mathrm{N}$ で引いているので、糸Cの鉛直成分はこれと反対向き(上向き)に同じ大きさでなければなりません。

$C_y = 6\ \mathrm{N}$

糸Cの大きさと向き

$C_x$ と $C_y$ は互いに垂直な成分なので、三平方の定理より、

$C = \sqrt{C_x^2+C_y^2} = \sqrt{8^2+6^2} = \sqrt{64+36} = \sqrt{100} = 10\ \mathrm{N}$

水平方向とのなす角を $\theta$ とすると、$\tan\theta = \dfrac{C_y}{C_x} = \dfrac{6}{8} = 0.75$ となり、$\theta \approx 37°$ です。

答え:糸Cの張力の大きさは $10\ \mathrm{N}$、水平方向から約 $37°$ の向き

練習問題

問題

重さ $25\ \mathrm{N}$ の物体が水平な机の上に置かれており、上から $5\ \mathrm{N}$ の力で押さえつけられている。この物体にはたらく垂直抗力の大きさを求めよ。

答え

鉛直方向のつり合いより $N=25+5=30\ \mathrm{N}$