物理 / 波動
ヤングの実験・回折格子・薄膜干渉
要点整理
これまで学んだ「光の干渉」の考え方を、実際に高校物理でよく登場する3つの実験・現象にあてはめていきます。
ヤングの実験
細いすき間(スリット)を2つ($S_1$、$S_2$、間隔 $d$)並べ、同じ光を通すと、$S_1$、$S_2$ は同位相で振動する2つの波源とみなせます。この2つのスリットから十分離れた($L\gg d$)スクリーンを置くと、干渉によって明るい線(明線)と暗い線(暗線)がしま模様になって現れます。
スクリーン上で、2つのスリットの真ん中(中心)から距離 $x$ だけ離れた点を $P$ とします。$L$ が $d$ や $x$ に比べて十分大きいとき、$S_1$、$S_2$ から $P$ までの経路差は、次のように近似できます。
$\text{経路差} \approx \frac{dx}{L}$
(これは、$S_1$、$S_2$、$P$がつくる細長い三角形を相似な図形として扱うことで得られる近似です。詳しい導出は公式集の証明ページで扱います。)
明線ができる条件(強め合う条件)は経路差が波長の整数倍になることなので、
$\frac{dx}{L} = m\lambda \implies x = \frac{mL\lambda}{d}\quad(m=0,\pm1,\pm2,\ldots)$
隣り合う明線($m$ と $m+1$)の位置の差、つまり干渉縞の間隔は、
$\Delta x = \frac{(m+1)L\lambda}{d}-\frac{mL\lambda}{d} = \frac{L\lambda}{d}$
となります。波長 $\lambda$ が大きいほど、またスリット間隔 $d$ が小さいほど、縞の間隔は広くなります。
回折格子
ヤングの実験ではスリットが2本でしたが、非常に細いすじを等間隔 $d$ で多数(数百〜数千本/mm)刻んだ板を「回折格子」といいます。スリットの本数が多いぶん、特定の角度にだけ光が強く集まり、より鋭くはっきりした明線ができます。
回折格子では、スリットの間隔 $d$ に対してスクリーンが近く、角度が大きくなることも多いため、ヤングの実験のような近似(経路差 $\approx dx/L$)ではなく、角度 $\theta$ を使った正確な経路差の式を使います。隣り合うスリットからの光の経路差は $d\sin\theta$ と表せるので、明線(強め合う)条件は、
$d\sin\theta = m\lambda\quad(m=0,\pm1,\pm2,\ldots)$
となります。$\theta$ は、格子の面に垂直な方向(正面方向)から測った回折の角度です。
薄膜干渉
シャボン玉の膜やレンズの表面に張られた薄い膜(厚さ $t$、屈折率 $n$)に光が当たると、膜の上面で反射する光と、膜を通り抜けて下面で反射してから戻ってくる光の、2つの反射光が干渉します。
この干渉を考えるときは、2つのことに注意する必要があります。
(1) 膜の中を往復する分の距離
下面で反射する光は、膜の中を厚さ $t$ の分だけ往復する(合計 $2t$)分、上面で反射する光より長い距離を進みます。ただし、膜の中は屈折率 $n$ の物質なので、真空中の波長 $\lambda$ で数えるときは、この距離を $n$ 倍した $2nt$ を経路差として数える必要があります(これを光路差といいます)。
(2) 反射のときの位相のずれ
光が反射するとき、屈折率の小さい側から大きい側に向かって反射する場合にかぎり、反射光の位相が半波長分($\lambda/2$)ずれることが知られています。逆に、屈折率の大きい側から小さい側へ反射する場合は、このずれは起こりません。
空気中にあるシャボン玉のような薄膜(まわりが空気、膜の屈折率が空気より大きい場合)では、
- 上面での反射:空気(屈折率小)→膜(屈折率大)への反射 → 半波長ずれる
- 下面での反射:膜(屈折率大)→空気(屈折率小)への反射 → ずれない
というように、2つの反射のうち片方だけに半波長のずれが起こります。
条件式にまとめる
光路差そのものは $2nt$ ですが、片方の反射で余分に半波長ずれる分を考慮すると、2つの反射光の間の「実質的な」経路差は $2nt+\dfrac{\lambda}{2}$ になります。これが波長の整数倍になったときに強め合うので、
$2nt+\frac{\lambda}{2} = m\lambda$
これを整理すると、
$2nt = m\lambda-\frac{\lambda}{2} = \left(m-\frac{1}{2}\right)\lambda$
$m$ は $0,1,2,\ldots$ の整数を自由に選べるので、$m'=m-1$ と置き直す(範囲を $m'=0,1,2,\ldots$ とそろえる)と、
$2nt = \left(m'+\frac{1}{2}\right)\lambda$
となります。同じように考えると、弱め合う(暗くなる)条件は、
$2nt = m\lambda\quad(m=0,1,2,\ldots)$
です。もともとの「ずれがない場合の直感」とは明線・暗線の条件が入れ替わっていることに注意しましょう。これは、半波長分のずれがある反射が、ちょうど1回だけ起こっているためです。
下のシミュレーションで、スリット間隔 $d$ と波長 $\lambda$ を変えながら、ヤングの実験でスクリーンにできる干渉縞のパターンがどう変わるか確認してみましょう(実際の実験では $d$ は波長よりずっと大きいですが、ここではパターンの変化がわかりやすいように、$d$ と $\lambda$ を近い大きさにして誇張しています)。
例題
例題1(基本)
問題
ヤングの実験で、スリット間隔 $d=2.0\times10^{-4}\ \mathrm{m}$、スクリーンまでの距離 $L=2.0\ \mathrm{m}$、波長 $\lambda=5.0\times10^{-7}\ \mathrm{m}$ である。干渉縞の間隔 $\Delta x$ を求めよ。
解答・解説を見る
干渉縞の間隔の式 $\Delta x=\dfrac{L\lambda}{d}$ に代入します。
$\Delta x = \frac{2.0\times5.0\times10^{-7}}{2.0\times10^{-4}} = \frac{1.0\times10^{-6}}{2.0\times10^{-4}} = 5.0\times10^{-3}\ \mathrm{m}$
答え:$\Delta x=5.0\times10^{-3}\ \mathrm{m}=5.0\ \mathrm{mm}$
例題2(標準)
問題
1mmあたり500本のすじが刻まれた回折格子に、波長 $\lambda=600\ \mathrm{nm}$ の光を当てた。この格子のすじの間隔 $d$ を求め、$m=1$(1次)の明線ができる角度 $\theta$ を求めよ。
解答・解説を見る
すじの間隔は、$1\ \mathrm{mm}$ の中に $500$ 本あるので、
$d = \frac{1\ \mathrm{mm}}{500} = 2.0\times10^{-3}\ \mathrm{mm} = 2.0\times10^{-6}\ \mathrm{m} = 2000\ \mathrm{nm}$
回折格子の明線条件 $d\sin\theta=m\lambda$ に、$d=2000\ \mathrm{nm}$、$m=1$、$\lambda=600\ \mathrm{nm}$ を代入します。
$2000\times\sin\theta = 1\times600$
$\sin\theta = \frac{600}{2000} = 0.30$
$\theta = \sin^{-1}(0.30) \approx 17.5°$
答え:$d=2.0\times10^{-6}\ \mathrm{m}$、$\theta\approx17.5°$
例題3(応用)
問題
屈折率 $n=1.33$ のシャボン玉の膜がある。空気中から見て、波長 $600\ \mathrm{nm}$ の光の反射が最も強め合うような、$0$でない最小の膜の厚さ $t$ を求めよ。ただし、空気→膜、膜→空気のうち、片方の反射でのみ半波長分の位相のずれが起こるものとする。
解答・解説を見る
明線条件 $2nt=\left(m+\dfrac{1}{2}\right)\lambda$ を使います。$0$でない最小の厚さは、$m=0$ のときです。
$2\times1.33\times t = \left(0+\frac{1}{2}\right)\times600$
$2.66t = 300$
$t = \frac{300}{2.66} \approx 112.8\ \mathrm{nm}$
答え:約 $113\ \mathrm{nm}$
練習問題
問題
ヤングの実験で、スリット間隔 $d=0.5\ \mathrm{mm}$、波長 $\lambda=650\ \mathrm{nm}$、スクリーンまでの距離 $L=1.5\ \mathrm{m}$ である。干渉縞の間隔 $\Delta x$ を求めよ。
答え
$\Delta x = \dfrac{L\lambda}{d} = \dfrac{1.5\times6.5\times10^{-7}}{5.0\times10^{-4}} = 1.95\times10^{-3}\ \mathrm{m} = 1.95\ \mathrm{mm}$