物理 / 原子

光電効果

要点整理

波動分野では、光は波(電磁波)として扱い、正弦波の式を使って表しました。ところが、金属に光を当てたときに電子が飛び出す「光電効果」という現象を調べると、波として考えるだけではうまく説明できないことがわかってきます。このページでは、光が波としての性質だけでなく、粒子としての性質も持っているという考え方を学びます。

光電効果とは

金属の板に、ある条件を満たす光を当てると、金属の表面から電子が飛び出してきます。この現象を光電効果、飛び出してくる電子を光電子と呼びます。

実験で調べると、光電効果には次のような不思議な特徴があることがわかります。

  1. 当てる光の振動数がある値より小さいと、光をどれだけ強くしても(どれだけ長い時間当てても)光電子は1個も飛び出さない。
  2. 光電子が飛び出す条件を満たしているとき、光を強くすると、飛び出す光電子のは増えるが、1個1個の光電子の最大の運動エネルギーは変わらない。
  3. 光電子の最大の運動エネルギーは、光の振動数を大きくすると大きくなる。

もし光が単なる波であるなら、光を強くする(波の振幅を大きくする)ほど、電子に多くのエネルギーを渡せるはずです。ですから、光が弱くても長時間当て続ければ、いつかは電子が飛び出してもよいはずです。しかし実験結果はそうなっていません。振動数が足りない光は、どれだけ強くしても、どれだけ長時間当てても光電子を出さないのです。この事実は、光を波として考える立場だけでは説明できません。

光量子仮説

そこでアインシュタインは、次のように考えました。

光は、振動数 $\nu$ に比例したエネルギー $h\nu$ を持つ、粒子の集まりとして金属に当たっている。

この粒子のことを光子(こうし)と呼びます。$h$ はプランク定数と呼ばれる比例定数で、$h = 6.6\times10^{-34}\ \mathrm{J\cdot s}$ という値を持ちます。光子1個のエネルギーは、

$E = h\nu$

で表されます。光を強くするというのは、波の振幅を大きくすることではなく、光子の数を増やすことに対応します。1個1個の光子が持つエネルギーは、振動数だけで決まっていて、光の強さには関係しません。

光電効果の式

金属の中の電子を外に取り出すには、金属が電子を引き止めている力に逆らって仕事をする必要があります。この、電子を1個取り出すのに最低限必要なエネルギーを仕事関数と呼び、記号 $W$ で表します。仕事関数の値は金属の種類によって決まっています。

光子1個が金属の中の電子に吸収されると、電子はそのエネルギー $h\nu$ を受け取ります。受け取ったエネルギーのうち、$W$ を金属の外に出るための仕事に使い、残りが飛び出した電子の運動エネルギーになります。もっとも大きな運動エネルギーで飛び出す光電子について、この関係を式にすると、

$K_{max} = h\nu - W$

となります。これをアインシュタインの光電方程式と呼びます。$K_{max}$ は光電子の最大運動エネルギーです。

この式からわかることを整理してみましょう。

  • $h\nu < W$ のとき、右辺は負になってしまいます。運動エネルギーが負になることはあり得ないので、この場合は光電子が飛び出さないということです。これが、振動数が足りない光では光電効果が起こらない理由です。
  • $h\nu$ がちょうど $W$ と等しくなる振動数を、限界振動数と呼び、記号 $\nu_0$ で表します。$h\nu_0 = W$ より、

$\nu_0 = \frac{W}{h}$

振動数がこの $\nu_0$ 以上であれば光電子が飛び出し、$\nu_0$ より小さければどれだけ光を強くしても光電子は飛び出しません。

  • 光を強くする、つまり光子の数を増やすと、電子に当たる光子の数が増えるので、飛び出す光電子のは増えます。しかし、1個の光子が電子に渡すエネルギーは $h\nu$ のままなので、光電子1個あたりの最大運動エネルギーは変わりません。

下のシミュレーションでは、金属の仕事関数を $W = 3.3\times10^{-19}\ \mathrm{J}$ に固定し、当てる光の振動数を変えられるようにしています。振動数を変えたときに、光電子が飛び出すかどうかがどう変わるか確認してみましょう。

例題

例題1(基本)

問題

仕事関数が $W = 3.3\times10^{-19}\ \mathrm{J}$ の金属に、振動数 $\nu = 7.5\times10^{14}\ \mathrm{Hz}$ の光を当てた。光電子は飛び出すか。飛び出す場合、その最大運動エネルギーを求めよ。プランク定数を $h = 6.6\times10^{-34}\ \mathrm{J\cdot s}$ とする。

解答・解説を見る

まず、この光の光子1個が持つエネルギー $h\nu$ を計算します。

$h\nu = 6.6\times10^{-34}\times 7.5\times10^{14}$

$6.6 \times 7.5 = 49.5$ なので、

$h\nu = 49.5\times10^{-20} = 4.95\times10^{-19}\ \mathrm{J}$

この値と仕事関数 $W = 3.3\times10^{-19}\ \mathrm{J}$ を比べると、$h\nu > W$ となっています。したがって、光電子は飛び出します。

最大運動エネルギーは、光電効果の式 $K_{max} = h\nu - W$ に代入して、

$K_{max} = 4.95\times10^{-19} - 3.3\times10^{-19} = 1.65\times10^{-19}\ \mathrm{J}$

答え:光電子は飛び出す。最大運動エネルギーは $1.65\times10^{-19}\ \mathrm{J}$

例題2(標準)

問題

例題1と同じ金属(仕事関数 $W = 3.3\times10^{-19}\ \mathrm{J}$)について、限界振動数 $\nu_0$ と、それに対応する光の波長(限界波長)$\lambda_0$ を求めよ。光の速さを $c = 3.0\times10^8\ \mathrm{m/s}$ とする。

解答・解説を見る

限界振動数は、$h\nu_0 = W$ を満たす振動数なので、

$\nu_0 = \frac{W}{h} = \frac{3.3\times10^{-19}}{6.6\times10^{-34}}$

$3.3 \div 6.6 = 0.5$ なので、

$\nu_0 = 0.5\times10^{-19-(-34)} = 0.5\times10^{15} = 5.0\times10^{14}\ \mathrm{Hz}$

次に、波の基本式 $v = f\lambda$(ここでは $v=c$、$f=\nu_0$)を波長について解くと $\lambda_0 = \dfrac{c}{\nu_0}$ となるので、

$\lambda_0 = \frac{3.0\times10^{8}}{5.0\times10^{14}}$

$3.0 \div 5.0 = 0.6$ なので、

$\lambda_0 = 0.6\times10^{8-14} = 0.6\times10^{-6} = 6.0\times10^{-7}\ \mathrm{m}$

答え:限界振動数は $5.0\times10^{14}\ \mathrm{Hz}$、限界波長は $6.0\times10^{-7}\ \mathrm{m}$(= 600 nm)

この結果は、例題1で使った光の振動数 $7.5\times10^{14}\ \mathrm{Hz}$ が限界振動数 $5.0\times10^{14}\ \mathrm{Hz}$ より大きいことを示しています。だからこそ、例題1で光電子が飛び出したのです。

例題3(応用)

問題

仕事関数が $W = 2.2\times10^{-19}\ \mathrm{J}$ の金属に、波長 $\lambda = 3.0\times10^{-7}\ \mathrm{m}$ の光を当てた。飛び出す光電子の最大運動エネルギーと、それを止めるのに必要な最小の電圧(阻止電圧)$V_0$ を求めよ。電気素量を $e = 1.6\times10^{-19}\ \mathrm{C}$、$h = 6.6\times10^{-34}\ \mathrm{J\cdot s}$、$c = 3.0\times10^8\ \mathrm{m/s}$ とする。

解答・解説を見る

まず、波長から振動数を求めます。波の基本式 $c = \nu\lambda$ を振動数について解くと $\nu = \dfrac{c}{\lambda}$ なので、

$\nu = \frac{3.0\times10^{8}}{3.0\times10^{-7}} = 1.0\times10^{15}\ \mathrm{Hz}$

光子のエネルギーは、

$h\nu = 6.6\times10^{-34}\times 1.0\times10^{15} = 6.6\times10^{-19}\ \mathrm{J}$

光電効果の式より、最大運動エネルギーは、

$K_{max} = h\nu - W = 6.6\times10^{-19} - 2.2\times10^{-19} = 4.4\times10^{-19}\ \mathrm{J}$

次に阻止電圧を考えます。阻止電圧とは、光電子の運動を電場の力で止めるのに必要な電圧のことです。電子(電気量の大きさ $e$)を電圧 $V_0$ で減速させて、ちょうど運動エネルギーがゼロになるようにするには、電場が電子にした仕事の大きさが運動エネルギーと等しくなればよいので、

$eV_0 = K_{max}$

これを $V_0$ について解くと、

$V_0 = \frac{K_{max}}{e} = \frac{4.4\times10^{-19}}{1.6\times10^{-19}} = 2.75\ \mathrm{V}$

答え:最大運動エネルギーは $4.4\times10^{-19}\ \mathrm{J}$、阻止電圧は $2.75\ \mathrm{V}$

練習問題

問題

限界波長が $6.0\times10^{-7}\ \mathrm{m}$ の金属に、波長 $3.0\times10^{-7}\ \mathrm{m}$ の光を当てた。飛び出す光電子の最大運動エネルギーを求めよ。$h = 6.6\times10^{-34}\ \mathrm{J\cdot s}$、$c = 3.0\times10^8\ \mathrm{m/s}$ とする。

答え

まず仕事関数を求めます。限界波長 $\lambda_0$ に対応する振動数は $\nu_0 = \dfrac{c}{\lambda_0} = \dfrac{3.0\times10^8}{6.0\times10^{-7}} = 5.0\times10^{14}\ \mathrm{Hz}$ なので、

$W = h\nu_0 = 6.6\times10^{-34}\times 5.0\times10^{14} = 3.3\times10^{-19}\ \mathrm{J}$

当てた光の振動数は $\nu = \dfrac{c}{\lambda} = \dfrac{3.0\times10^8}{3.0\times10^{-7}} = 1.0\times10^{15}\ \mathrm{Hz}$ なので、$h\nu = 6.6\times10^{-19}\ \mathrm{J}$。

$K_{max} = 6.6\times10^{-19} - 3.3\times10^{-19} = 3.3\times10^{-19}\ \mathrm{J}$