物理基礎 / 波

波の重ね合わせとうなり

要点整理

重ね合わせの原理

池に2つの石を同時に、少し離れた場所に投げ入れると、それぞれの石から広がる波の輪が、途中でぶつかり合います。ぶつかった場所では、波は消えてしまうわけではなく、それぞれの波を通り抜けたあと、何事もなかったかのようにそのまま広がり続けていきます。

このとき、2つの波が重なっている場所の水面の高さ(変位)は、どうなっているのでしょうか。実は、その場所の変位は、それぞれの波が単独で存在していたとしたときの変位を、そのまま足し合わせたものになっています。これを重ね合わせの原理といいます。

たとえば、ある場所である瞬間に、波Aだけなら変位が $+3\,\text{cm}$、波Bだけなら変位が $+2\,\text{cm}$ になるはずだったとすると、両方が重なったときの実際の変位は $+3+2=+5\,\text{cm}$ になります。また、波Aが $+3\,\text{cm}$、波Bが $-3\,\text{cm}$ であれば、重なった変位は $+3+(-3)=0$ となり、波が打ち消し合って見えなくなります。

このように、山と山が重なれば大きく強め合い、山と谷が重なれば弱め合う現象を干渉といいます。重ね合わせの原理は、これから学ぶ「うなり」だけでなく、波に関するさまざまな現象の土台になる、とても重要な原理です。

うなりとは何か

振動数がわずかに異なる2つの音、たとえば $440\,\text{Hz}$ の音と $442\,\text{Hz}$ の音を同時に鳴らすと、一定の大きさの音が聞こえるのではなく、「ワーン、ワーン」というように、音の大きさが周期的に強くなったり弱くなったりして聞こえる現象が起こります。これをうなりといいます。

なぜこのようなことが起こるのでしょうか。振動数が少しだけ違う2つの波は、ある瞬間には山と山がぴったり重なって強め合いますが、振動数が違うために、時間が経つにつれて少しずつタイミングがずれていき、やがて山と谷が重なるようになって弱め合います。さらに時間が経つと、再びタイミングが揃って強め合う……ということを繰り返します。この「強め合う→弱め合う→強め合う」の周期的な繰り返しが、音の大小の変化(うなり)として聞こえるのです。

うなりの振動数を求める式

1秒間に聞こえるうなりの回数(これを「うなりの振動数」と呼びます)は、2つの音の振動数 $f_1$、$f_2$ を使って、次の式で求められます。

$f = |f_1 - f_2|$

なぜこの式になるのか、考え方を確認しておきましょう。

2つの音は、振動数がわずかに違うため、時間が経つにつれて、一方の波がもう一方の波よりも少しずつ多く振動していきます。ちょうど、2つの波が「1回分だけ多く・少なく振動して、再びタイミングが元通りに揃う」までにかかった時間を $T_{\text{うなり}}$ としましょう。

$T_{\text{うなり}}$ の間に、波1は $f_1 \times T_{\text{うなり}}$ 回振動し、波2は $f_2 \times T_{\text{うなり}}$ 回振動します。「タイミングが再び揃う」ということは、この振動回数の差がちょうど $1$ 回分になった、ということです。式で書くと、

$f_1 \times T_{\text{うなり}} - f_2 \times T_{\text{うなり}} = 1$

左辺の $T_{\text{うなり}}$ をくくり出すと、

$(f_1 - f_2) \times T_{\text{うなり}} = 1$

となるので、$T_{\text{うなり}}$ について解くと、

$T_{\text{うなり}} = \frac{1}{f_1 - f_2}$

が得られます。これは「タイミングが揃ってから、次にタイミングが揃うまでの時間」、つまりうなり1回分の周期です。振動数はその逆数なので、

$f_{\text{うなり}} = \frac{1}{T_{\text{うなり}}} = f_1 - f_2$

$f_1$ と $f_2$ のどちらが大きいか分からない場合でも、うなりの回数(振動数)は必ず正の値になるはずなので、絶対値をつけて、

$f_{\text{うなり}} = |f_1 - f_2|$

とまとめられます。「和」ではなく「差」の絶対値であるという点を、しっかり押さえておきましょう。

シミュレーションで確認する

下のシミュレーションは、ある1点における2つの音の変位を時間の経過とともに表したものです(横軸は時間 $t$ です)。振動数 $f_1$、$f_2$ をスライダーで変えて、太い線で示した合成波(2つの波を足し合わせたもの)の振幅が周期的に大きくなったり小さくなったりする様子(点線の「うわぶくろ」のような包絡線)を観察してみましょう。情報欄には、計算されたうなりの振動数も表示されます。

例題

例題1(基本)

問題 振動数 $440\,\text{Hz}$ の音と $444\,\text{Hz}$ の音を同時に鳴らしたとき、1秒間に何回のうなりが聞こえるか求めなさい。

解答・解説を見る

うなりの振動数の式 $f = |f_1 - f_2|$ に、$f_1 = 440\,\text{Hz}$、$f_2 = 444\,\text{Hz}$ を代入します。

$f = |440 - 444| = |-4| = 4\,\text{Hz}$

したがって、1秒間に4回のうなりが聞こえます。

例題2(標準)

問題 振動数 $440\,\text{Hz}$ の音さAと、振動数が分からない音さBを同時に鳴らしたところ、1秒間に3回のうなりが聞こえました。音さBの振動数として考えられる値をすべて求めなさい。

解答・解説を見る

うなりの振動数の式は $f_{\text{うなり}} = |f_1 - f_2|$ です。ここで $f_1 = 440\,\text{Hz}$、$f_{\text{うなり}} = 3\,\text{Hz}$ なので、音さBの振動数を $f_B$ とすると、

$|440 - f_B| = 3$

絶対値の中身は $+3$ にも $-3$ にもなり得るので、2通りの場合を考えます。

$440 - f_B = 3$ のとき、$f_B = 440 - 3 = 437\,\text{Hz}$

$440 - f_B = -3$ のとき、$f_B = 440 + 3 = 443\,\text{Hz}$

したがって、音さBの振動数として考えられるのは、$437\,\text{Hz}$ または $443\,\text{Hz}$ です。うなりの回数だけでは、音さBの振動数が440Hzより高いのか低いのかは分からないことに注意しましょう。

例題3(応用)

問題 振動数 $440\,\text{Hz}$ の音さAと、音さBを同時に鳴らすと、1秒間に5回のうなりが聞こえました。次に、音さBに少量のロウを付けて振動数を少しだけ下げたところ、うなりの回数は1秒間に3回に減りました。音さB本来の(ロウを付ける前の)振動数を求めなさい。

解答・解説を見る

まず、例題2と同じように、最初のうなりの情報から音さBの振動数の候補を2つ出します。$|440-f_B|=5$ より、

$f_B = 440 - 5 = 435\,\text{Hz} \quad \text{または} \quad f_B = 440 + 5 = 445\,\text{Hz}$

次に、「ロウを付けて振動数を少し下げたら、うなりの回数が5回から3回に減った」という情報を使って、どちらが正しいかを判断します。ロウを付けると音さBの振動数はわずかに下がります。

$f_B = 435\,\text{Hz}$ だった場合:$435\,\text{Hz}$ は $440\,\text{Hz}$ より低いので、振動数をさらに下げると、$440\,\text{Hz}$ との差はもっと大きくなります。差が大きくなるということは、うなりの回数は5回よりも増えるはずです。しかし実際には3回に減っているので、これは矛盾します。

$f_B = 445\,\text{Hz}$ だった場合:$445\,\text{Hz}$ は $440\,\text{Hz}$ より高いので、振動数を少し下げると、$440\,\text{Hz}$ に近づいていきます。近づくということは、差は小さくなり、うなりの回数は5回より減るはずです。これは「3回に減った」という実際の結果と矛盾しません。

したがって、音さB本来の振動数は $445\,\text{Hz}$ です。

練習問題

問題 振動数がそれぞれ $258\,\text{Hz}$ と $262\,\text{Hz}$ の2つの音を同時に鳴らしたとき、1秒間に聞こえるうなりの回数を求めなさい。

答え

$f_{\text{うなり}} = |258 - 262| = 4$ 回