物理 / 原子

粒子の波動性(ド・ブロイ波)

要点整理

前のページでは、波であるはずの光が、光電効果という現象では粒子(光子)のようにふるまうことを学びました。光子1個のエネルギーは、振動数を $\nu$ として $E=h\nu$ で表されるのでした。

フランスの物理学者ド・ブロイは、この事実を見て、次のように考えました。

光が波なのに粒子の性質を持つのなら、逆に電子のような粒子も、波としての性質を持っているのではないか。

この考え方を物質波、または提唱者の名前をとってド・ブロイ波と呼びます。粒子が波としてふるまうときの波長を、物質波の波長と呼びます。

ド・ブロイ波の波長の式

光子の運動量とエネルギーの関係($p = \dfrac{E}{c}$、これは波動分野で学ぶ関係です)と、光子のエネルギーの式 $E=h\nu$、そして波の基本式 $c=\nu\lambda$ を組み合わせると、光子の波長 $\lambda$ と運動量 $p$ の間には、

$\lambda = \frac{h}{p}$

という関係が成り立つことが導かれます。ド・ブロイは、この関係が光子だけでなく、電子のようなふつうの粒子にも成り立つと考えました。つまり、質量 $m$ の粒子が速さ $v$ で運動しているとき、その運動量は $p=mv$ であり、この粒子には波長

$\lambda = \frac{h}{p} = \frac{h}{mv}$

の波としての性質があるということです。$h$ はプランク定数($h = 6.6\times10^{-34}\ \mathrm{J\cdot s}$)で、光電効果のページで登場したものと同じ定数です。

この考え方は、後で電子線を結晶に当てると波と同じように回折・干渉が起こることが実験で確認され、正しいことが証明されました。

運動エネルギーから運動量を求める場合

問題によっては、粒子の速さ $v$ ではなく、運動エネルギー $K$ が与えられることがあります。このときは、運動エネルギーの定義式 $K = \dfrac{1}{2}mv^2$ から運動量 $p=mv$ を求め直す必要があります。

$K = \dfrac{1}{2}mv^2$ の両辺に $2m$ をかけると、

$2mK = m^2v^2 = (mv)^2 = p^2$

したがって、

$p = \sqrt{2mK}$

という関係が得られます。これを $\lambda = \dfrac{h}{p}$ に代入すれば、運動エネルギーから直接ド・ブロイ波長を求めることができます。

$\lambda = \frac{h}{\sqrt{2mK}}$

例題

例題1(基本)

問題

質量 $m = 9.1\times10^{-31}\ \mathrm{kg}$ の電子が、速さ $v = 2.0\times10^6\ \mathrm{m/s}$ で運動している。この電子のド・ブロイ波長を求めよ。プランク定数を $h = 6.6\times10^{-34}\ \mathrm{J\cdot s}$ とする。

解答・解説を見る

まず運動量を求めます。

$p = mv = 9.1\times10^{-31}\times 2.0\times10^6$

$9.1 \times 2.0 = 18.2$ なので、

$p = 18.2\times10^{-25} = 1.82\times10^{-24}\ \mathrm{kg\cdot m/s}$

ド・ブロイ波長の式に代入すると、

$\lambda = \frac{h}{p} = \frac{6.6\times10^{-34}}{1.82\times10^{-24}}$

$6.6 \div 1.82 \approx 3.6$ なので、

$\lambda \approx 3.6\times10^{-10}\ \mathrm{m}$

答え:ド・ブロイ波長は約 $3.6\times10^{-10}\ \mathrm{m}$

例題2(標準)

問題

静止していた電子(質量 $m=9.1\times10^{-31}\ \mathrm{kg}$、電気量の大きさ $e=1.6\times10^{-19}\ \mathrm{C}$)を、電圧 $V=100\ \mathrm{V}$ で加速した。加速後の電子のド・ブロイ波長を求めよ。$h=6.6\times10^{-34}\ \mathrm{J\cdot s}$ とする。

解答・解説を見る

電圧 $V$ で加速された電子が得る運動エネルギーは、電場が電子にした仕事に等しいので、

$K = eV = 1.6\times10^{-19}\times 100 = 1.6\times10^{-17}\ \mathrm{J}$

運動エネルギーから運動量を求める式 $p=\sqrt{2mK}$ に代入します。

$2mK = 2\times 9.1\times10^{-31}\times 1.6\times10^{-17}$

$2\times9.1\times1.6 = 29.12$ なので、

$2mK = 29.12\times10^{-48} = 2.912\times10^{-47}$

平方根をとると、

$p = \sqrt{2.912\times10^{-47}} \approx 5.4\times10^{-24}\ \mathrm{kg\cdot m/s}$

したがって、ド・ブロイ波長は、

$\lambda = \frac{h}{p} = \frac{6.6\times10^{-34}}{5.4\times10^{-24}} \approx 1.2\times10^{-10}\ \mathrm{m}$

答え:ド・ブロイ波長は約 $1.2\times10^{-10}\ \mathrm{m}$

例題3(応用)

問題

質量 $m=0.15\ \mathrm{kg}$ のボールが、速さ $v=20\ \mathrm{m/s}$ で投げられた。このボールのド・ブロイ波長を求めよ。$h=6.6\times10^{-34}\ \mathrm{J\cdot s}$ とする。また、この結果から、なぜ私たちの身の回りにある物体の波としての性質に気づかないのか説明せよ。

解答・解説を見る

運動量は、

$p = mv = 0.15\times 20 = 3.0\ \mathrm{kg\cdot m/s}$

ド・ブロイ波長は、

$\lambda = \frac{h}{p} = \frac{6.6\times10^{-34}}{3.0} = 2.2\times10^{-34}\ \mathrm{m}$

答え:ド・ブロイ波長は $2.2\times10^{-34}\ \mathrm{m}$

この値は、原子の大きさ(だいたい $10^{-10}\ \mathrm{m}$ 程度)と比べても、けた違いに小さい値です。ド・ブロイ波の波長がこれほど短いと、波としての性質(回折や干渉)が目に見える形で現れることはありません。物質波の波長は、質量が大きい物体ほど短くなるため、電子のように質量が非常に小さい粒子でなければ、波としての性質は実験でも観測しにくいのです。

練習問題

問題

質量 $m=1.67\times10^{-27}\ \mathrm{kg}$ の中性子が、速さ $v=2.2\times10^{3}\ \mathrm{m/s}$ で運動している。この中性子のド・ブロイ波長を求めよ。$h=6.6\times10^{-34}\ \mathrm{J\cdot s}$ とする。

答え

$p = mv = 1.67\times10^{-27}\times 2.2\times10^{3} \approx 3.67\times10^{-24}\ \mathrm{kg\cdot m/s}$

$\lambda = \dfrac{h}{p} = \dfrac{6.6\times10^{-34}}{3.67\times10^{-24}} \approx 1.8\times10^{-10}\ \mathrm{m}$