物理
共通テスト対策
この科目の共通テストでの傾向
共通テストの物理では、公式に数値を当てはめるだけでは解けない問題が多く出題されます。ここでは、対策を始める前に知っておきたい、共通テストならではの特徴を整理します。
1. 身の回りの現象や実験の場面から出題される
教科書の章末問題のように「〇〇を求めよ」とだけ書かれた問題は少なく、実験の様子やグラフ、日常生活の一場面を題材にして、そこから物理現象を読み取らせる問題が中心になります。問題文が長くても、聞かれていることは基本的な公式の応用であることがほとんどなので、焦らずに状況を整理することが大切です。
2. 「なぜそうなるか」を問う問題が多い
計算して数値を出すだけでなく、「その現象がなぜ起こるのか」「グラフの形がなぜそうなるのか」を、選択肢や記述で説明させる問題が目立ちます。公式を覚えるだけでなく、公式が表している物理的な意味を理解しておく必要があります。
3. グラフや図を読み取る力が問われる
$v$-$t$グラフ、$p$-$V$グラフ、波形のグラフなど、グラフから情報を読み取ったり、逆にグラフを選んだりする問題が頻出です。グラフの傾き・面積・切片が何を表しているかを、単元ごとにきちんと押さえておきましょう。
4. 複数の単元を組み合わせた問題が出ることがある
例えば力学的エネルギー保存と円運動、電磁誘導と力学的な運動のように、複数の単元の知識を組み合わせないと解けない問題が出題されることがあります。単元ごとの知識を、バラバラに覚えるのではなく、関連づけて理解しておくことが有効です。
5. 時間配分が厳しい
大問数が多く、1問にかけられる時間は限られています。計算が複雑になりそうな問題を後回しにする判断力や、有効数字を意識した見積もり計算(だいたいの大きさを素早く見積もる力)も、実戦では役立ちます。
単元別の対策ポイント
様々な運動
放物運動、円運動、単振動、相対速度など、力学の応用範囲です。まず、運動している物体にはたらく力をすべて図に描き出し、運動方程式 $ma=F$ を正しい方向で立てることが基本になります。円運動では向心力の向き(常に中心を向く)、単振動では変位に比例して逆向きにはたらく復元力がポイントです。速度や加速度をベクトルとして、水平・鉛直(または接線・法線)方向に分解して考える習慣をつけましょう。
熱力学
気体の状態方程式 $pV=nRT$ と、熱力学第一法則 $\Delta U=Q+W$ の使い分けが中心になります。$p$-$V$グラフが与えられたときは、グラフの面積が気体がした(された)仕事を表すこと、定積変化・定圧変化・断熱変化でそれぞれ何が一定に保たれるかを整理しておきましょう。符号のミス(気体が仕事をされたのか、したのか)は特に間違えやすいので注意が必要です。
波動
波の基本式 $v=f\lambda$ を軸に、反射・屈折・干渉・定常波・ドップラー効果などが展開されます。波形のグラフ(横軸が位置のグラフと、横軸が時間のグラフ)を混同しないこと、干渉条件(強め合う・弱め合う条件)を経路差(または位相差)から立てられるようにしておくことが大切です。
電気と磁気
直流回路の合成抵抗、コンデンサーを含む回路、電磁誘導(レンツの法則による誘導起電力の向きの判断)が頻出です。回路図を見たときに、電流の向きと大きさ、各素子にかかる電圧を、キルヒホッフの法則やオームの法則を使って整理する練習を積みましょう。電磁誘導では、磁束の変化を妨げる向きに誘導電流が流れるという原則を、図を描いて確認する習慣が有効です。
原子
出題範囲としては小さい単元ですが、近年は独立した大問として、あるいは他単元と組み合わせた形で出題されることが増えています。光電効果の $K_{max}=h\nu-W$、物質波の $\lambda=h/p$、水素原子のエネルギー準位 $E_n=E_1/n^2$、質量とエネルギーの関係 $E=mc^2$、半減期の式 $N=N_0(1/2)^{t/T}$ という、いくつかの基本公式を正確に使い分けられるようにしておけば、対応できる問題がほとんどです。特に、光の粒子性・電子の波動性という「常識とは逆の性質」がなぜ導入されたのか、その実験的な根拠を言葉で説明できるようにしておくと、記述式の問題にも対応できます。
実戦問題
実戦問題1
小球を、高さ $19.6\ \mathrm{m}$ の建物の屋上から、水平方向に速さ $v_0=10\ \mathrm{m/s}$ で投げ出した(水平投射)。地面に達するまでの時間 $t$ と、その間の水平方向の移動距離 $x$ を求めよ。また、地面に達する直前の速度の向きが水平となす角を $\theta$ とするとき、$\tan\theta$ の値を求めよ。重力加速度を $g=9.8\ \mathrm{m/s^2}$ とする。
解答・解説を見る
鉛直方向は自由落下と同じ運動なので、落下距離の式 $y=\dfrac{1}{2}gt^2$ に $y=19.6$、$g=9.8$ を代入すると、
$19.6 = \frac{1}{2}\times9.8\times t^2 = 4.9t^2$
$t^2 = 4 \implies t = 2\ \mathrm{s}$
水平方向は等速なので、移動距離は、
$x = v_0 t = 10\times2 = 20\ \mathrm{m}$
地面に達する直前の鉛直方向の速さは、$v_y=gt=9.8\times2=19.6\ \mathrm{m/s}$。水平方向の速さは $v_0=10\ \mathrm{m/s}$ のまま変わらないので、
$\tan\theta = \frac{v_y}{v_0} = \frac{19.6}{10} = 1.96 \approx 2.0$
答え:$t=2\ \mathrm{s}$、$x=20\ \mathrm{m}$、$\tan\theta\approx2.0$
実戦問題2
ある弦を伝わる波の周期は $T=0.20\ \mathrm{s}$、波長は $\lambda=0.40\ \mathrm{m}$ であった。この波の速さ $v$ を求めよ。また、この波が別の媒質に進んで波長が半分の $0.20\ \mathrm{m}$ になったとき(振動数は境界を越えても変化しないものとする)、別の媒質中での波の速さ $v'$ を求めよ。
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振動数は周期の逆数なので、
$f = \frac{1}{T} = \frac{1}{0.20} = 5.0\ \mathrm{Hz}$
波の基本式 $v=f\lambda$ より、
$v = 5.0\times0.40 = 2.0\ \mathrm{m/s}$
波が別の媒質に進んでも、振動数は波源によって決まる値のまま変化しません。振動数 $f=5.0\ \mathrm{Hz}$ のまま、波長が $\lambda'=0.20\ \mathrm{m}$ になったとすると、
$v' = f\lambda' = 5.0\times0.20 = 1.0\ \mathrm{m/s}$
答え:$v=2.0\ \mathrm{m/s}$、$v'=1.0\ \mathrm{m/s}$
波が異なる媒質に進むとき、振動数は変わらず、波長と速さだけが変化するという点がポイントです。
実戦問題3
ある金属の仕事関数は $W=3.52\times10^{-19}\ \mathrm{J}$ である。この金属に振動数 $\nu=8.0\times10^{14}\ \mathrm{Hz}$ の光を当てたところ、光電子が飛び出した。飛び出す光電子の最大運動エネルギーを求めよ。また、この金属の限界振動数 $\nu_0$ を求め、振動数 $\nu$ の光が光電効果を起こす条件を満たしていることを確認せよ。プランク定数を $h=6.6\times10^{-34}\ \mathrm{J\cdot s}$ とする。
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光子のエネルギーは、
$h\nu = 6.6\times10^{-34}\times8.0\times10^{14} = 5.28\times10^{-19}\ \mathrm{J}$
最大運動エネルギーは、
$K_{max} = h\nu - W = 5.28\times10^{-19} - 3.52\times10^{-19} = 1.76\times10^{-19}\ \mathrm{J}$
限界振動数は、
$\nu_0 = \frac{W}{h} = \frac{3.52\times10^{-19}}{6.6\times10^{-34}} \approx 5.3\times10^{14}\ \mathrm{Hz}$
与えられた振動数 $\nu=8.0\times10^{14}\ \mathrm{Hz}$ は、限界振動数 $\nu_0\approx5.3\times10^{14}\ \mathrm{Hz}$ より大きいので、光電効果が起こる条件($\nu>\nu_0$)を満たしています。これは、実際に光電子が観測されたという問題文の内容とも一致しています。
答え:最大運動エネルギーは $1.76\times10^{-19}\ \mathrm{J}$、限界振動数は約 $5.3\times10^{14}\ \mathrm{Hz}$(条件を満たす)