公式の証明・導出

単振動の変位・速度・加速度の式の導出

関連単元: 物理 様々な運動

証明する内容

振幅 $A$、角振動数 $\omega$ の単振動、すなわち変位が

$x=A\sin(\omega t)$

と表される振動について、その速度 $v$ と加速度 $a$ が、それぞれ次のように表されることを証明します。

$v=A\omega\cos(\omega t)$

$a=-A\omega^2\sin(\omega t)=-\omega^2x$

証明

ステップ1:単振動を、等速円運動の正射影として作る

$xy$ 平面上に、原点 $O$ を中心とする半径 $A$ の円を考えます。この円周上を、点Pが反時計まわりに一定の角速度 $\omega$ で回転しているとします(これは等速円運動です)。時刻 $t=0$ で点Pが $x$ 軸上の点 $(A,0)$ にあるとすると、時刻 $t$ での点Pの位置を表す角度は $\theta=\omega t$ であり、点Pの座標は、

$P=(A\cos(\omega t),\ A\sin(\omega t))$

となります。

ここで、点Pから $y$ 軸に下ろした垂線の足(点Pを $y$ 軸に垂直に映した点)を点Qとします。点Qは $y$ 軸上を上下に動く点で、そのy座標(原点からの符号付きの距離)は、点Pのy座標と同じ

$A\sin(\omega t)$

です(以後、点Qが $y$ 軸上のどの位置にいるかを表すこの量を、あらためて記号 $x$ と呼びます。これが、点Qの単振動の変位です)。つまり $x=A\sin(\omega t)$ です。点Pが等速円運動をしながら1周する間、点Qは $y$ 軸上を $-A$ から $A$ の間を往復する単振動をすることになります。これが、等速円運動の正射影として単振動をとらえるという考え方です。

ステップ2:点Pの速度ベクトルを求める

点Pは、半径 $A$ の円周上を角速度 $\omega$ で回転しているので、「等速円運動の加速度(向心加速度)の導出」のページで確認したのと同じ考え方から、点Pの速度ベクトル $\vec{v_P}$ は、大きさが

$v_P=A\omega$

であり、向きは、位置ベクトル(中心Oから点Pへ向かうベクトル)に垂直で、回転の向き(反時計まわり)を向いています。位置ベクトルの向きが角度 $\theta$ のとき、速度ベクトルの向きは、そこから $90°$ 反時計まわりに回転した角度 $\theta+90°$ になります。したがって、点Pの速度ベクトルは、

$\vec{v_P}=(A\omega\cos(\theta+90°),\ A\omega\sin(\theta+90°))$

三角関数の公式 $\sin(\theta+90°)=\cos\theta$ を使うと、$\vec{v_P}$ のy成分は、

$A\omega\sin(\theta+90°)=A\omega\cos\theta=A\omega\cos(\omega t)$

ステップ3:点Qの速度は、点Pの速度ベクトルのy成分に等しいことを使う

点Qのy座標(単振動の変位 $x$)は、常に点Pのy座標と同じ値です。したがって、点Qが単位時間あたりに動く速さ(すなわち点Qの速度)は、点Pのy座標が単位時間あたりに変化する割合、つまり点Pの速度ベクトルのy成分に等しくなります。これは、水平投射・斜方投射の運動を、水平方向と鉛直方向に分解して考えたときと同じように、1つのベクトルの動きを、成分ごとに分けて追いかけることができるという考え方にもとづいています。

したがって、点Qの速度 $v$ は、ステップ2で求めた $\vec{v_P}$ のy成分に等しく、

$v=A\omega\cos(\omega t)$

となります。

ステップ4:点Pの加速度ベクトルを求める

点Pは半径 $A$、角速度 $\omega$ の等速円運動をしているので、「等速円運動の加速度(向心加速度)の導出」のページより、点Pの加速度ベクトル $\vec{a_P}$ は、大きさが

$a_P=A\omega^2$

であり、向きは、点Pの位置から中心Oに向かう向き、つまり位置ベクトル(角度 $\theta$)とちょうど反対向き、角度 $\theta+180°$ の向きです。したがって、点Pの加速度ベクトルは、

$\vec{a_P}=(A\omega^2\cos(\theta+180°),\ A\omega^2\sin(\theta+180°))$

三角関数の公式 $\sin(\theta+180°)=-\sin\theta$ を使うと、$\vec{a_P}$ のy成分は、

$A\omega^2\sin(\theta+180°)=-A\omega^2\sin\theta=-A\omega^2\sin(\omega t)$

ステップ5:点Qの加速度は、点Pの加速度ベクトルのy成分に等しいことを使う

ステップ3と同じ考え方により、点Qの加速度 $a$ は、点Pの加速度ベクトルのy成分に等しくなります。したがって、

$a=-A\omega^2\sin(\omega t)$

さらに、ステップ1で $x=A\sin(\omega t)$ としているので、この式の右辺の $A\sin(\omega t)$ を $x$ に置き換えると、

$a=-\omega^2x$

とも書けます。

以上より、

$v=A\omega\cos(\omega t),\qquad a=-A\omega^2\sin(\omega t)=-\omega^2x$

が証明されました。

この証明のポイント

複雑に見える単振動の速度・加速度の式も、「単振動は等速円運動を真横(またはある軸の方向)から見た(正射影した)ときの動きである」という見方をすることで、すでに分かっている等速円運動の速度・加速度から機械的に導くことができます。ベクトルをある軸の方向の成分だけ取り出して考えるという考え方は、投射運動の分解などでも使う、応用範囲の広い考え方です。