公式の証明・導出

屈折の法則(スネルの法則)の導出

関連単元: 物理 波動

証明する内容

屈折率 $n_1$ の媒質1から、屈折率 $n_2$ の媒質2へ、光(または波)が進むとき、境界面の法線と入射光のなす角を入射角 $\theta_1$、法線と屈折光のなす角を屈折角 $\theta_2$ とすると、次の関係が成り立ちます。

$n_1\sin\theta_1 = n_2\sin\theta_2$

これがスネルの法則(屈折の法則)です。この証明では、波が伝わるようすを説明する「ホイヘンスの原理」(波面上のすべての点が新しい波(素元波)の源になる、という考え方)を使って、この関係式を導きます。

証明

ステップ1:状況の設定

媒質1と媒質2の境界が、1本の直線(境界線)になっているとします。媒質1の中を進む光の速さを $v_1$、媒質2の中を進む光の速さを $v_2$ とします。

境界線上に、2つの点A、Bをとります。点Aと点Bは境界線上にあり、線分ABの長さを求めるために使います。

入射する光は、境界面に対して平行な波面(進行方向に垂直な面)を持つ波として進んでくるとします。この波面が、まず点Aに達し、それから少し時間が経ってから点Bに達するとします。

波面は、進行方向(光線の方向)に対して常に垂直です。入射角 $\theta_1$ は、境界面の法線(境界線に垂直な直線)と、入射光の光線とのなす角として定義されます。

ステップ2:点Bに波が到達するまでの時間を求める

波面が点Aに到達した瞬間を時刻 $t=0$ とします。この瞬間、点Bに向かっている光線上の、まだ媒質1の中にある点を点Qとします(点Qは、時刻 $t=0$ における波面上の点であり、これから境界線上の点Bに向かって進んでいく途中の点です)。

線分AQは、時刻 $t=0$ における波面の一部なので、光線の進行方向に垂直です。したがって、線分AQと線分QBは垂直に交わり、三角形AQBは、点Qで直角になっている直角三角形です。

境界面(線分ABを含む直線)の法線と、光線の方向(線分QBの方向、これは入射光線と平行です)とのなす角が入射角 $\theta_1$ なので、幾何学的な関係から、波面AQと境界線ABとのなす角(つまり角QABの大きさ)も $\theta_1$ に等しくなります(波面は光線に垂直で、境界線は法線に垂直なので、光線を法線に対して角 $\theta_1$ だけ傾けると、波面も境界線に対して同じ角 $\theta_1$ だけ傾くためです)。

直角三角形AQBにおいて、角Aの大きさが $\theta_1$、直角が点Qにあることから、角Aの対辺である線分QBの長さは、斜辺ABの長さを使って、

$QB = AB\sin\theta_1$

と表せます。

点QからBまで、光は媒質1の中を速さ $v_1$ で進むので、この距離を進むのにかかる時間 $\Delta t$ は、

$\Delta t = \frac{QB}{v_1} = \frac{AB\sin\theta_1}{v_1}$

です。つまり、波面がAに到達してから、Bに到達するまでにかかる時間が、この $\Delta t$ です。

ステップ3:点Aから広がる素元波を考える

ホイヘンスの原理によると、時刻 $t=0$ に波面が点Aに到達した瞬間から、点Aは新しい波(素元波)の発生源となり、媒質2の中を球面状(この状況を平面で考えているので円形)に広がっていきます。この素元波は、媒質2の中を速さ $v_2$ で広がります。

したがって、時刻 $\Delta t$ が経過した(つまり、波面がちょうど点Bに到達した)瞬間には、点Aを中心とする素元波は、半径

$r = v_2 \Delta t = v_2\times\frac{AB\sin\theta_1}{v_1}$

の円(球面)にまで広がっています。

ステップ4:新しい波面(屈折波の波面)を作る

ホイヘンスの原理では、ある時刻における実際の波面は、その時刻までに各点から広がった素元波に共通に接する面(包絡面)として得られます。

時刻 $\Delta t$ において、境界線上の点Bには波面がちょうど到達したところであり、点Aからの素元波は半径 $r=v_2\Delta t$ の円にまで広がっています。したがって、この時刻における新しい波面は、点Bを通り、点Aを中心とする半径 $r$ の円に接する直線です。この直線と円の接点を点Pとします。

円の接線は、接点における半径に垂直なので、

$AP \perp BP$

が成り立ちます。また、半径の長さより $AP = r = v_2\Delta t$ です。

屈折光の光線は、素元波の広がる方向、つまり点Aから接点Pに向かう方向(線分APの方向)になります。したがって、屈折角 $\theta_2$(境界面の法線と屈折光線とのなす角)は、線分APと境界面の法線とのなす角に等しくなります。

ステップ5:屈折角に関する式を作る

三角形ABPに注目します。角Pは直角($AP\perp BP$ より)です。新しい波面BPと境界線ABとのなす角(角ABPの大きさ)は、ステップ2と同じ理屈(波面は光線に垂直、境界線は法線に垂直)により、屈折角 $\theta_2$ に等しくなります。

直角三角形ABPにおいて、角Bの大きさが $\theta_2$、直角が点Pにあることから、角Bの対辺である線分APの長さは、斜辺ABの長さを使って、

$AP = AB\sin\theta_2$

と表せます。ステップ4より $AP=v_2\Delta t$ でもあるので、

$AB\sin\theta_2 = v_2\Delta t$

が成り立ちます。

ステップ6:2つの式から屈折の法則を導く

ステップ2で得た式 $AB\sin\theta_1 = v_1\Delta t$ と、ステップ5で得た式 $AB\sin\theta_2 = v_2\Delta t$ を並べると、

$AB\sin\theta_1 = v_1\Delta t, \qquad AB\sin\theta_2 = v_2\Delta t$

です。この2つの式の、左辺どうし、右辺どうしを、それぞれ割り算します。

$\frac{AB\sin\theta_1}{AB\sin\theta_2} = \frac{v_1\Delta t}{v_2\Delta t}$

$AB$ と $\Delta t$ が約分できるので、

$\frac{\sin\theta_1}{\sin\theta_2} = \frac{v_1}{v_2}$

が得られます。

ステップ7:速さを屈折率で表す

屈折率は、真空中の光速を $c$ として、$n_1=\dfrac{c}{v_1}$、$n_2=\dfrac{c}{v_2}$ と定義される量です。これより、$v_1=\dfrac{c}{n_1}$、$v_2=\dfrac{c}{n_2}$ となるので、

$\frac{v_1}{v_2} = \frac{c/n_1}{c/n_2} = \frac{c}{n_1}\times\frac{n_2}{c} = \frac{n_2}{n_1}$

これをステップ6の結果に代入すると、

$\frac{\sin\theta_1}{\sin\theta_2} = \frac{n_2}{n_1}$

両辺に $n_1\sin\theta_2$ をかけると、

$n_1\sin\theta_1 = n_2\sin\theta_2$

が得られます。これがスネルの法則です。

この証明のポイント

この証明では、「波面上の各点を新しい波の発生源とみなす(ホイヘンスの原理)」という考え方と、「速さの違う2点から同時刻に出発した波が作る図形を、直角三角形に注目して解析する」という考え方を使いました。この、2つの直角三角形を作って辺の比を比較する方法は、波に関する他の作図問題にも応用できる考え方です。